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君に捧げる千の花束 39
何はともあれ、自分自身の目的としては順調なのだから と、喜蝶は赤くなった手に再び視線を落とした。
婚約パーティー当日、有数の格式を誇るホテルの宴会場は華やかな光を放つシャンデリアが輝き、映像の中でしか見たことがないような衣装を身に纏った人々が行き交う。
喜蝶はかろうじてスーツと呼べるものを身につけてはいたが、周りの客を見渡してみれば、いかに浮いているかは一目瞭然だった。
参加することが目的なのだから着飾る必要はなかったけれど……だからといって悪目立ちするにも本意ではなかった。
「気にすることはないわよ。私だって吊るしのスーツなんだし」
木田マネージャーはそういうと、色とりどりのカナッペを皿に取り分けていく。
「尊臣さんに挨拶は?」
「いいのいいの。どうせ私たちはずっと顔合わせてるんだし、美味しいもの食べて飲んで、適当なところで帰りましょ」
「…………尊臣さんのご兄弟もいらっしゃってるんですよね」
「ああ、うん。目立つ兄弟だから見たらわかるわよ? どうしたの?」
「ご挨拶くらいはと……」
何せ、尊臣の新しいマネージャーなのだから と、喜蝶は胸中で呟く。
弟の新しいマネージャーが身内に挨拶をする。
これなら不自然にならずに近づけるはずだった。
「向こうはクロノベルのCEOよ? うちらみたいなのは気にかけないわよ。アゲハくんがアイドルとか俳優で売り出すって言うなら顔つなぎにって思うけど……興味ないんでしょ? じゃあ気にしない気にしない」
ひらひら と手を振り、木田マネージャーはデザートの方へと駆けていってしまった。
喜蝶はその背中を苦々しく見やり……芸能界には興味がないのだと言い切ってしまったあの時の自分に悪態をつく。
嘘でも華やかな世界に興味があるといっていたら、今頃は尊臣の兄弟と顔を合わせていたのかもしれないと……
「アゲハさん! ここにいたぁ! 円しゃん、新しいマネージャーさんだよぉ!」
パタパタと、衣装をダメにしそうな勢いでこちらに駆け寄ってくるのは尊臣だ。
タキシードに生花のブーケを胸に差し、髪をセットした姿はなるほど……人々の前に立つに相応しい華やかなものだと納得させられる迫力がある。
木田マネージャーが手を焼くほどの、中身の幼い末っ子気質な雰囲気はどこにもない。
「お前……木田さんにも見捨てられたのかよ」
「違うよ! 忙しくなって、手が回らなくなってきたから助っ人で入ってくれたの! だって見てよ! アゲハさん綺麗でしょ?」
「うっわ、アルファらしい迫力だな……」
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