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君に捧げる千の花束 41
もう一人は癖のある赤毛の青年だ。少し細身だと感じる体型で、顔の形も卵形で受ける印象は柔らかい。ただ……尊臣と似ているかと尋ねられると言い淀んでしまう顔立ちだった。
尊臣は、自分によく似ている方を長男の「威臣」、似ていない方を次男の「奏朝」だと紹介した。
威臣は弟をよろしくと形式的な言葉を言っただけだったが、奏朝の方はにっこりと笑ってから「尊臣は突飛なことをする子だから迷惑をかけます」と頭を下げる。
柔らかいもの腰にホッとしつつ、喜蝶は奏朝に向かい合いながらはっと目を瞬かせた。
「…………あの時の……」
思わず漏らした言葉に、奏朝は不思議そうに首を傾げただけだった。けれど、喜蝶は威臣と奏朝を交互に見やり……胸を突くような冷たい感情に揺さぶられる。
この二人はあの日、AXIS MALLの東出口で揉めていた二人だと、喉に唾を押し込みながら思い出す。
後藤にかかってきた電話、その向こうで時宝が告げた場所と日時に喜蝶はそこへと訪れていた。
堂々と見ることは叶わなかったが、それでも上階にはホテル、ハイブランドショップも入っているショッピングモールなのだから人通りは多く、目立たない服をきて飲み物を片手にベンチに座っていれば不審がられなかった。
その状態で東口を見守り続けて……
後藤が現れないことでこの計画は流れて時宝は来ないんじゃないかと、喜蝶が帰ろうとした時、言い争う二人が飛び出すようにショッピングモールから出てきた。
そのうちの一人が奏朝だ。
そして……
「 っ」
よくよく見てみれば、そのもう一人が威臣だ。
どうして挨拶した時に気が付かなかったのか……?
「服のせい? 雰囲気?」
思わずそわ と体が震えた。
この目の前にいるのが「時宝」だ。
誰も名前を言いたがらなかった、「時宝」。
「奏朝さんをお見かけしたことがあります、数日前にAXIS MALLにいらっしゃいませんでしたか?」
「 っ、行きましたよ。新しいネクタイが欲しくて……あそこに入っている『VALÉROUX』が好きなんです、揚場さんも贔屓のお店が?」
にこやかに話を広げてくれたけれど、一瞬の返事の詰まりを喜蝶は見逃さなかった。
明らかな動揺に、何かあるのだと教えてくる。
「あ、じゃあ一緒にいらしたのはお兄さんの威臣さんだったんですね、プライベートは雰囲気が違うので気づきませんでした。ご兄弟でお買い物でしたか?」
「 ……えぇ」
この質問にも奏朝は動揺した。
何か聞かれてはまずいと思っている表情だ と、喜蝶は何かを掴んだ気分になり、もっと突っ込んだ話をしようとした……時、
「奏朝、どう言うことだ? お前にはあの日、那波の長女との見合いを……」
「お見合いに! 持っていく贈り物と、ネクタイを探しに行っていたんです」
奏朝はサッと姿勢を正すと、滑らかな言葉で威臣に返事をした。
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