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君に捧げる千の花束 43
「逆に興味が湧きました」
『弩級のアルファがいただろう』
自分自身の言葉が脳裏に蘇る。
くだらないβ二人のフェロモンと共に残されていた、気持ちが悪くなるほど重苦しく攻撃的なαのフェロモン。
喜蝶はモニター越しに映る尊臣の横顔を見つめながら、後藤がとうとう口にしなかった三人目は時宝で間違いないだろうと確信を得た。
だから、このパーティーは絶好のチャンスだった。
「 ――――ぁ、ごめ ごめんね。今、フェロモン漏れてたよね」
腕を引っ張っていた尊臣は中身が入れ替わったように表情をころりと変えると、ヘニャヘニャとした笑い顔で頭を掻く。
せっかく整えられていた髪が少しだけ乱れて、いつもの『ちゃんとしたαだけど全然そんなふうに見えなくて可愛い』って表情になる。
「ごめんね?」
あはは、と表情を取り繕う尊臣に、喜蝶はポツリと尋ねた。
「あ、あの……何か、聞いてはいけないことを聞いてしまいましたか?」
「…………あ、ごめ……正兄は……兄の正臣は……こう言うところ、来ないと、思う」
足元に視線を動かすその行動がすべてを物語っているようだった。
尊臣と正臣の間に横たわる溝を見た気がして、喜蝶は曖昧に頷く。
「正兄は俺のすぐ上の人さんなんだけど……ちょっと、ね。あ! 兄弟仲が悪い訳じゃないんだ! ホント……ホント…………ちょっと、すれ違っちゃってるだけ」
「本当は、今日も来て欲しかったくらい……」と付け加えられた言葉は今にも消え入りそうだった。
「……正臣さんって、もしかして一番上のお兄さんに似ているんでしょうか?」
「あ、うん。ほくろのあるなしで見分けないとダメなくらいそっくりだよ」
ちょっと会話が焦れたことに安心したのか、尊臣はヘラヘラとしている。
そうなると、あの日、ショッピングモールで奏朝と揉めていたのは正臣だと思って違いない。……つまり、あいつが薫を襲って頸を噛んだα……だ。
喜蝶はあの瞬間に戻って、奏朝に駆け寄る正臣を捕まえにいけなかったのか……悔しさに唇を噛む。
問い詰めて……真実を漏らさなければならないほど追い詰めるにはどうしたらいいのか? 喜蝶は尊臣に連れられて歩きながら、一歩進んだ事柄に拳を握りしめた。
遠くに笑う友人……いや、ライバルにすらならなかったライバルだ と、喜蝶は隠れながら思う。
どういう繋がりで呼ばれたのかはわからなかったが、Ωの腕を取って歩く人物を知っていた。
「――――六華まで、呼ばれているのか……」
短い高校時代、自分の顔ではなく薫を搾取するものとして喜蝶を見ていた数少ないふざけ合える友人だった。
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