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君に捧げる千の花束 47

「…………はい、それなら」  なんとか絞り出した返事にホッとした笑顔を返されて、自分自身が安堵する場面なのにそうできない気持ちを抱えたまま喜蝶はその場を後にした。  指の上にバットを振り下ろしても繁田は悲鳴を上げなかった。  その代わりに食いしばった歯をギリギリと鳴らしながら、喜蝶を見上げて唾を履いた。  残念ながらそれは途中で力尽き、喜蝶の顔にまでは届かなかったけれど、繁田が喜蝶に屈していないと言うことははっきりとした。  顔が変形するほど殴られ、足も折られて逃げ出せない状態だというのに、繁田は後藤と違って取り乱すようなこともなく真っ直ぐな視線で喜蝶を見つめている。 「わかってんだろ? 目的。あんたと後藤、それからもう一人とつるんでやってたことを知ってるんだ」 「だからどうした」  それは開き直りだった。  後藤のように泣き喚いて怯えて言い返してくれればよかったのに、繁田は目に力を込めて睨み返して…… 「三人目の名前を教えろってところだろう?」  切れた唇から赤い筋を垂らしながら、繁田は面白そうに尋ねてくる。  殴り倒されて地面を這いずっているのは繁田だというのに、喜蝶はまるで自分が尋問されているかのような気まずさを感じ、背筋がふっと寒くなる。 「後藤の話を 聞いた。あれもあんただろう? なぁ? あんたなんだろ?」  繰り返し同じ言葉で尋ねてくる男の雰囲気に飲まれそうになり、喜蝶は縋るように金属バットを握る手に力を込めた。  鮮血の下に黒い汚れが残っているのを見て、繁田はすべて理解したようだった。  酷薄そうな目で辺りを見回し、この状況からなんとかするためのかけらを探しているようだ。 「誰も助けにこない」 「いやいや、他に仲間が  いるかと  」  視線を巡らせ始めた繁田の意識を自分に向けさせるために、喜蝶は再びバットを振り下ろして繁田の膝を砕かんばかりの力で殴りつける。 「 ――――!」  繁田の体がびくりと跳ね、床に転げ回ってうめく。 「最後の一人の名前を言えばすぐんび解放されるぞ?」  もう一度振りかぶるポーズを取ると、繁田はその瞳に一瞬だけ狼狽の色を浮かべた。  ――――何かを、待っている?  繁田は確実に自分の振り下ろすバットに恐怖を抱いているのだとわる。けれどそれを悟られないようにして、のらりくらりとした態度を装って…… 「――――!」  その瞬間、咥内を刺した苦味に喜蝶は思わずふらついた。  ローストに失敗したコーヒーの豆をそのまま口内で噛み砕いたかのような刺激に、喜蝶は咄嗟に視線を巡らせる。  ギラリ と、視線の端で繁田の目が光った。  

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