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君に捧げる千の花束 75
「あっさりくたばられるのも癪だな。指先から潰していってやるよ。お前みたいな下衆にはそれくらいが上等だろ?」
正臣は金属バットの重さを確認するように振り回した後、その先端を喜蝶の顔面へと突きつけてはにたりと笑う。
遠くの街灯の光を鈍く反射して、今まで人を殴り続けてきた狂気が自分へと向けられたと言うのに、喜蝶は正臣に笑い返した。
「ぁ?」
「兄弟でやりまくってる奴に下衆と呼ばれるとはなぁ」
正臣がしたように、にたりと口角を上げて意味ありげな色を湛えた目で見上げる。
「 っ」
「あんたが、兄の奏朝にちんこ突っ込んでオンナ代わりにしてるってこと、バラしてもいいんだぜ?」
一瞬は怯んだように見えた正臣だったが、喜蝶の言葉が続くに従って再びニタニタとした笑みが溢れ始めた。
「で?」
続きを促されて、喜蝶は言葉に詰まる。
予定ではこのことを突きつけられて、秘匿しようと動く正臣が逆上するなり慌てるなりの行動をとって隙を作るはずだった。
正臣は一歩、死神のような足取りで距離を詰める。
「だからどうした?」
手にしたバットの銀色が、街灯の鈍い光を反射して、死神の鎌のように冷たく光る。
平坦な言葉は、正臣にとって兄弟と肉体関係を持っていたことは、わずかな隠すことなどカケラもない程度のものなのだと物語っていた。
「二人の 関係、を 」
「言って? だからどうした? 俺は選ばれたアルファだ。そんなこと、痛くも痒くもねぇ」
兄弟で肉体関係がある。
その禁忌を是とする思考は、喜蝶の考えの範囲から逸脱するものだった。
正臣はまた一歩と距離を詰める。その足取りには先ほどまでの激昂とは違う、獲物を解体する職人のような残酷な静けさが宿っていた。
振りかぶられるバットに、喜蝶は咄嗟にまだ近くに落ちていたボストンバッグを盾にするように引き寄せながら叫んだ。
「お前が強姦魔だとしてもか!」
ガィィィンッ! と、凄まじい衝撃がバッグ越しに腕を突き抜け、喜蝶の身体が再び地面を転がる。中に入っていた備品が砕ける不吉な音が響いたが、直撃だけは免れた。
「オレは、お前がしてきたことを知っている」
「は?」
「お前が以前から、繁田達とつるんでオメガやベータに何を行ってたか! オレは知ってる!」
喜蝶の言葉に、正臣は顔を歪めながら金属バットの先端でガリガリと地面を引っ掻く。
金属に削られて小さく甲高い音が響き、夜の闇に細かく刺さる小さな針のようだった。
「三人で強姦して、無理やり番契約を結んだこともあっただろう……それは? それをばらされて、無事でいられるか?」
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