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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 3

 背をわざと丸めて膝をわずかに折り、少しでもオレの視線に合わせようと……あるいは周囲の目に留まらないようにと必死に「低く」なろうとしている。 「……足、挫いたのか?」 「えっ? いえ、そんなことは……」  そんな姿勢の理由を察して、それでも尋ねるオレは性格が悪いのかもしれない。 「ただ、その、僕が背を伸ばすと目立っちゃうから。龍成さんに……恥ずかしい思い、させたくなくて」  智は伏し目がちに、そして少し困ったように笑った。  その謙虚さがあの日聞いた嘲笑の残響のように思えて、オレの胸の中にチリリと焼けるような苛立ちが走った。 「……おい」 「は、はい」  オレは立ち止まり、智の腕を掴んで強引に引き寄せる。  駅前の大通りだ。  行き交う人々が、オレたちを見て「デカっ」「どっちがアルファだ?」と無遠慮な視線を投げかけてくる。智はその視線に晒されるたび、さらに肩をすくめてオレの影に隠れようとした。 「小さく見せようとすんな。膝を伸ばせ。背筋を伸ばせ」 「でも……」 「オレは恥ずかしいなんて思わない。シャキッとしろ!」  一喝すると、智は弾かれたように背筋を伸ばした。  ぐん と黒いサラサラの前髪が上がって……見上げる角度がさらに深まり、智の広い肩が春の陽光を一身に浴びて輝く。  智は驚いたように目を見開き、それから、今まで一度も向けられたことのない言葉を噛み締めるように、ゆっくりと深く息を吐いた。 「……大きいままで、いいんですか」 「当たり前だ。それがお前だろ」  智の瞳から燻るように漂っていた不安の影が消えていく。その真っ直ぐな男前な顔に、初めて一点の曇りもない笑みが浮かんだ。  もっと笑えばいいと感じた通り、智の笑顔は惚れ惚れするほど整っていて美しい。  やっぱりオレの審美眼は正しかったらしい! ……だが、街の空気は相変わらず無遠慮だ。  すれ違う集団が智を見て「うわ、ありえねぇ」と指をさして笑い、好奇の視線が智のネックガードに突き刺さる。 「  っ」  その瞬間、オレの中のαとしての本能が牙を剥いた。  オレは智の腰を抱き寄せて周囲に向けて鋭く、重苦しいフェロモンを解放した。  もちろん、バース性に対する法整備やエチケットの普及で、こんな街中で身も知らない相手にいきなり威嚇フェロモンを出すなんてマナー違反だし、警察に「ちょっと」と声をかけられても仕方がない行為だったけれど、そんなの関係ない。   「……消えろ」  声に出すまでもなく、オレの放つ圧倒的な威圧感にさっきまでヘラヘラしていた連中が顔を青くして散っていった。 「龍成さん……?」 「……智。お前は、オレの恋人だ。誰にも指一本触れさせねぇし、一言も文句は言わせない。……分かったか?」  独占欲が、熱を持って体の奥底から突き上げてくる。  

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