202 / 219

ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 5

 ネックガードだけじゃない、智は極々シンプルなものを着て目立たないようにしているけれど、その身を包んでいるのはすべてが高級品だと言うことに、オレは気付いていた。  それを毎日着こなし、何十万もするようなカバンを普段使いにする……智は、あの時聞こえてきたように金持ちの息子なんだろうなって、感じる。  オレの家も貧しくはなかったけれど、推測だけれど智の家から考えたら吹けば飛ぶような財産しかない家だ。  金がすべてだとは言わないけれど……言わないけれど……っあるに越した方がいいのは確か。  いいところに就職できたとして、智の生活水準を落とさないくらいまで稼ごうと思ったらどれだけかかる? 智に苦労をかけさせないで、余裕を持って生活できるくらい稼ぎたい!  1年? 2年? そんなにもたもたしてていいのか⁉︎ オレっ! 「 っ! 智!」 「は、はい!」  オレが勢いよく名前を呼んだから智は飛び上がって……そうすると、上から覗き込むような圧迫感が生まれる。 「け   」  「結婚」と言いそうになって、慌てて口を閉じた。  思わず言ってしまいそうになった言葉をなんとか飲み込んで、オレの言葉を待ってきょとんと首を傾げている智に向き直る。  まだ親の脛を齧っている状態で、そんなこと言えるわけがない!   「……ぅ、……どうだ? まだ痛いか?」 「龍成さんに手当てしてもらったので痛くありません」  嬉しそうにはにかむように笑う智は無意識なのか肩をすくめるような動作をする。  少しでも自分を小さく見せようとする。それは今まで、智に向けられた心ない言葉に対する防御反応なんだろうな…… 「無防備すぎんだろ……よそでそんな顔すんなよ」 「そんな顔?」  きょとん と首を傾げるから、ネックガードに覆われているとはいえ、智の綺麗な頸が晒される。 「……智。お前、自分がどれだけ美味そうか自覚ないだろ」 「えっ、あ、あの……僕、筋肉質で硬いですよ?」  体脂肪率一桁だと言う智の鼻先を、指でチョンと弾いた。   「そういう話してんじゃねぇよ」  オレは溜息をつき、智の肩に額を預ける。  広くて、温かくて、微かに石鹸の匂いがする。  あの日、オレが守ると決めた背中は、今ではオレが一日を終えて一番に帰りたくなる、世界で一番安全な場所に変わっていた。 「龍成さん?」 「……しぃー! 今、充電中だ」  オレがそう言うと、ちょっと笑った雰囲気がして智の大きな手が、オレの背中をそっと包み込む。  その掌だけでオレの背中の半分が隠れてしまうんじゃないかってサイズ。

ともだちにシェアしよう!