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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 9
無骨なネックガードにしてもそうだ。
近年は抑制剤の高品質化やバース性の周知徹底、社会としてバース性の進出を支える風潮があって、Ωはあえて差別を増長してしまうからとネックガードをつけない奴も多い。
そんな風潮の中で、はっきりとΩだと教えるネックガードをつける智に、一度だけ「外してみたら?」と言ってみたことがある。
そうすれば「Ωなのに大きい奴」から「大きい奴」に変わるから……智の憂いを少しでも軽くできるはずだ。
でも智は、「パ……父が、何が起こるかわからない世の中だから。純潔は、番に贈ることができる最も尊い贈り物だからって」そう言ってネックガードをくすぐるように引っ掻く。
オレもαだからよくわかる。
別に処女だとか童貞とか、そこら辺を崇める気はない。そんなことを言い出したらオレはどんなΩにも振り向いてもらえなくなる。
だから、気にはしないってことを前提に話をするけれど、それでも番にしたいと思う相手の「初めて」って言うのは、それだけで宝とかそんな表現で収まらないくらい価値があるものだと思う。
それを理解しているから、キスをした。
「だから、キスした」
「え……」
智の白い肌がサッと赤みを帯び、耳の先端なんかは綺麗なさくらんぼ色だ。
「ぁ……でも 」
「就職を成功させたら、ご両親に挨拶に行きたい。許してもらって……結婚したら頸を噛ませて欲しい」
さっきまで鼻水を垂らしながら人生を悲観していたオレが、智の言葉ひとつでこんなきりっとした表情になれるんだから驚きだ。
でも、智に番と言ってもらえて、世界で一番最強のαと言ってもらえて……もうそれだけで何でもできるって思えてくる。
「そ、それって……」
「在学中に籍を入れることに、ご両親は反対されるかな?」
「 っ、ぅ、うぅん! そんなことないと思います!」
がばっとオレの手をとる智の顔は真っ赤なトマト色だ。
ふるふると震える瞳は以前見た居酒屋の時と同じだったけれど、浮かんだ感情は喜びに満ち溢れていた。
――翌週、オレは最後の、そして第一志望の面接に臨んでいた。
何とか漕ぎつけた最終面接には社長の飯野社長だけでなく、圧の強いお偉いさんがずらりと並んでいて……オレの左隣の奴は面接が始まる前に小便チビって辞退してしまった。
それくらい……居並ぶ面接官たちの圧が強くて……
フェロモンを使ってるわけじゃないんだけど、使ってないだけに気迫でこれだけ息苦しいというのは、もう圧迫面接とかそんなレベルじゃない。
青い顔をした右隣がしどろもどろに返事をし、ぐったりと椅子に腰を下ろす。それを見て……けれど、不思議とオレに緊張はなかった。
だって、オレ、世界で一番最強のαだし。
背筋を伸ばし、面接官の目を真っ向から見据える。
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