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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 10

「君にとって、仕事とは何かな?」  その問いに、オレは迷いなく答えた。 「大事な人を守るための手段です」  かつてのオレなら、もっと小難しい経営用語を並べて意気込みを語っていただろう。だが今の言葉には、智の体温とあの夜の涙の重みが乗っている。 「私には、一生をかけて守り、養い、幸せにすると決めた番がいます。そのために、私は御社で誰よりも活躍し、誰よりも誠実に働きたい。御社を更に高みへ引き上げることが、転じて番を守り、幸せにできると信じているからです!」    傲慢なαのプライドではない。一人の男としての、逃げ場のない覚悟。 「御社では、番休暇や育児休暇の取得率が高く、番とともに家庭を築きつつ、守り、社員としても貢献します!」 「    理想ばかりだな?」  酷く陰鬱な声に聞こえた。  オレの言葉をぶった斬るような、重くて低くて暗い声。それが山のように大きな体から発せられたものだから、部屋の中の空気がぎゅっと押しつぶされた気配がした。 「理想ですが実現します。守るという言葉だけを切り取ってしまうと烏滸がましいと思われるでしょうが、オレ自身も番に支えられています。守っているようで守られているのを日々痛感しています、その日々を守るために私は邁進していく所存です!」  面接としては三角……いや、バツだろう。  いざとなったら家庭を優先させます! なんてことを入社前から宣言している人間なんて、危なっかしくて採用なんてできない。  でも、オレの譲れない部分はここだと感じたから、真正面から陰鬱に睨みつけてくる面接官にしっかりと視線を合わせて宣言した。  後悔はー……多分ない。  いや、ちょっとしてる。  番手当と育休、伴侶にΩを持つ社員にここほど手厚い待遇や保証がある会社はなかなかない。  発情期のたびに智に寂しい思いをさせたくないから、なんとしても縋りつきたいのが本音だった。 「……っ」  でも、正面の面接官の圧を考えると、ダメかもしんない。 「ずいぶんと若いうちに番を持ったんだね」  ギリギリと音がしそうなほどの視線を放つ面接官とは違い、飯野社長の言葉は穏やかだった。 「はい、実はまだ正式な番ではないんです。きちんと就職活動を終えてご両親にご挨拶をしてから、番契約を結ぼうと話し合っていますので」 「ああ、そうなんだ」  飯野社長は何事かを紙に書きつけると、隣の面接官にだけ見えるようにそっと傾ける。  ……これは、番なんていないんじゃないかとか言われるんだろうか? いや、まぁ、噛んでないから実際にいないんだけど。

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