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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 11

 ちゃんと番になってないのに番番って言いすぎた? 確約していないものでここまで意気込むっておかしいことだったかなって、冷や汗が背中を伝い始める。  面接官は笑いながら意見交換を始めてしまい……オレは背中をぐっしょり濡らしながらことの成り行きを見守るしかない。 「   まだ番にもなっていないのに大見栄を張りすぎですね、信用に値しない」 「   まぁまぁ、それだけぞっこんってことなんでしょう」  飯野社長と……ガタイのいい面接官の一人との会話に、オレは心の中で一喜一憂する。  まるでシーソーに乗せられている心持ちのせいか、三半規管がやられて酔いそうだった。 「君にとって番とは?」 「手の中に落っこちてきた幸運です!」  間髪入れずに返すと、聞いた飯野社長が目をぱちくりさせる。 「番がこんなに可愛いってことも、幸せだってことも、いてくれるからなんでもできるってやる気がみなぎるのも、空の青さや絞ってくれるオレンジジュースが美味しいってことも、全部、全部! 教えてくれたのは番です。番が腕の中にいてくれなかったら、私はご飯のおいしさも、手を繋いだらこんなにも温かいってことも、弱音を見せてもいいってことも知りませんでした。彼に出会えた以上の幸運に出会うことは、私にはもうないでしょう」  一気に捲し立てて……まずいと思ったけど止まらなかった。 「腕の中に収まってふわふわ笑ってくれる、そんな幸せな経験をさせてくれる、可愛い……可愛い、めちゃくちゃ可愛い世界一の天使です!」  一度溢れ出した言葉に、オレは自身でその通りと相槌を打ってしまうと、もうダメだ! 「それに、彼と一緒にいると、ご両親に大切に育てられたって痛いほど分かるんです。あんなに真っ直ぐで、優しくて……彼は、ご両親が慈しみ、守り育ててきた、世界にたった一つの『宝物』でもあるって! そんな大切な宝物を、彼が今まで受けてきた以上の愛で今度は私が包み込みたいんです。ご両親が幸せに育てたままの姿で、あの背中を二度と惨めに丸めさせない。そのための強さと場所を、私は、御社で手に入れたいんです!」  最後はほとんど叫びに近かった。  広い会議室に、オレの荒い呼吸の音だけが響く。 「…………」  これ以上ないくらいやらかしてしまった。  あれほどしどろもどろとしていた隣のやつが、「こいつ落ちたな」って本気の眼差しでオレを見ている。  オレもそう思う。  でも、もうここまできたら智の可愛さをもっと言い切ってから落ちるぞ! と意気込んで、それからー……と続けようとしていると、不機嫌そうに「もういい」と低い声が響いて止めた。

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