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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 12
二、三人は殺してるんじゃないかって目つきの男はメモに何事かを書きつけて飯野社長の方に押しやると、なんの躊躇も見せないまま立ち上がる。
「 ゎ、 」
でか の言葉はなんとか飲み込むことができたのは、智のことを知っているからだ。
その面接官は、そのまま睨みつけるような視線を最後まで残しながら面接室を出て行ってしまう。
一人出ただけなのに、部屋の空気がずいぶんと軽くなって……その男の存在がどれほど部屋の空気を圧迫していたのかを物語る。
「ああ、彼が席を外したことは気にしないでくれたまえ」
口角を上げていた飯野社長はサッと顔を引き締めると、経営者の顔に戻ってオレの隣に質問を始めた。
何が何だかわからなかったけれど……とにかく、オレの面接は終わったらしい。色々な意味で。
かっこよく甲に走る血管が膨れ、力強く指が食い込んだ瞬間にコップの中にジャバ! と果汁がなだれ込む。
力を入れるに従って動く前腕の筋肉の動きとか、めちゃくちゃかっこいい!
「んふふ」
気持ち悪い笑い声を上げたのに、智はそんなオレを気味悪がるわけでもなく、ニコニコと笑ってくれている。
オレンジを2玉、絞り切るとコップに並々と搾りたてジュースが誕生して、それをオレに差し出す智は本当に可愛い。
「どうぞ」
「んふふ」
「…………龍成さん……」
ポツリと返ってきたのは少し寂しさを滲ませた心配な声だ。
オレのことを心配してくれているってわかってる。わかってるけど……体を起こせないままに、ソファーから智を見上げた。
面接からまだ一日だ。
まだ結果が送られてくるには早い……けど、浮かれてやらかしてしまったことを考えると、切り替えて次に行ったほうがいいだろう。
智のことを散々自慢できて一片の悔い……いや、もうちょっといっぱいいいところを話せたと思うと、そこの部分が悔しい。
「グレープフルーツかリンゴジュースにしますか? パイナップルは今、まだ練習中で……あ! 家からメロンも持ってきてるんですよ!」
「んふふー……どれもおいしそうだな」
現実を見ていないオレの言葉を聞いて、智はグラスを置いてオレのそばに座った。
搾りたてのオレンジのいい香りが智からしていて、つん と鼻を刺激するから……鼻にかかるような声になっちゃったんだと思う。
きっとそうだ。
「んー……ふふ。オレ、落ちちゃったよ」
智が、「今までも落ちてましたよ」って言い出す前に、「第一志望だったんだ」と付け加える。
「そこ……さ、番を持つ人間の待遇が国一番って言われるくらい手厚くてさ、番がいる人間なら何がなんでも入りたいなって思えるところなんだ。就職して、智と番になって、その先……それを、オレは観客として参加したくないんだ」
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