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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 13
オレはまっすぐにオレを見てくれている真摯な眼差しに怯まずに顔を上げた。
「智のどのヒートの時も、巣作りも、子供が生まれる瞬間も、育っていく時だって、傍にいたいし関わりたい! それができる会社に就職したかったのに……」
「他の会社ができないわけじゃないですよ」
それに……と、智は少しだけ困ったように眉を下げて、大きな、けれどオレにとってはひどく繊細に見える指先でオレの髪を梳く。
あやされてるなってわかるけどそれが逆に嬉しい。
「……それに、僕、こう見えて結構丈夫ですから。龍成さんがそこまで無理をして完璧な環境を選ばなくても、二人で支え合っていければそれだけで……」
「バカ、お前な」
オレは智の手首を掴んで、そのまま自分の頬に引き寄せた。
オレンジを搾りきったばかりの指先からは、甘酸っぱい香りが立ち上っている。智は「丈夫だ」なんて言うけれど、オレから見れば、この指一本だって誰にも傷つけさせたくない、ガラス細工のような宝物なんだ。
「智は、ご両親が大事に大事に育ててきた『天使』なんだぞ? オレがそのバトンを受け取るからには、一分一秒だって不自由させたくないし、不安にさせたくないんだよ。ヒートの時に一人で耐えさせるとか、に、にに……妊娠中にオレが仕事でいなくて寂しい思いをさせるとか……そんなの、オレのプライドが許さねぇ」
「……龍成さん」
「お前の『大丈夫』は、オレにとっては『全然大丈夫じゃない』んだ。お前がどんなに丈夫だって言ったって、オレにとっては腕の中に入れて守るべき、たった一人の大事な人なんだからな!」
そう言ってぎゅっと抱きしめるとますますオレンジの香りが強くなる。いや、それだけじゃなくて、普段は抑制剤で抑えられているから全然匂わない智のフェロモンも柔らかく鼻先をくすぐり始めて……
甘く爽やかなオレンジとも違う、ちょっと刺激的な柑橘系の香り。
薄いシャツの下にあるがっしりとした体と、良質で柔らかな筋肉の感触……
「 ……っ」
ごくん と思わず溢れた唾を飲み込む。
「キスはダメなのに、こうやって抱きつくのはOKなんて、不思議だな」
オレは興奮して暴走しそうになるのを抑えるために、全然関係ないことを口に出した。
番になるのもセックスも、なんならキスも禁止だって言うのに、こうやって抱きしめ合ってちょっと体を弄るあうのは許されている なんて、チグハグな感じがしていつも気にはなっていた。
ふか とオレの手から溢れる胸筋の柔らかいけれど跳ね返してくる弾力に夢中になっていると、智は困ったように笑った。
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