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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 14

「最初はダメだったんですけど、マ……母が、お付き合いしてたら手が当たることもあるからって、父を説得してくれたんです」  ぎゅぎゅっと智を抱きしめて……ちょっと背中に汗が伝う。  智の説明を聞くと、ボディタッチが許されているのではなく、連れ立って歩いてて手が当たった程度なら許すってこと……だろ?  きっと今のように密着して胸を揉むことなんて想定していなかったはず。 「あ、それって……」  バレたらまずいやつ……と、その時だった。    テーブルに置いたままの携帯電話が、短くけれど鋭く震えた。  反射的に視線を落とすと、画面には見覚えのある会社のロゴが躍っている。  『【内定通知】選考結果のお知らせ』 「   っ!」  心臓が口から飛び出しそうになる。  思わず胸筋を掴む手に力が入ったからか、智が「龍成さん?」と心配そうに顔を覗き込んでくる……が、オレは返事もできないまま震える指でメールをタップした。  そこには、お祈りの文面にはない簡潔ながらも熱を帯びた言葉が並んでいた。  『厳正なる選考の結果、当社の採用候補者として内定とさせていただくこととなりましたので、ここにご連絡申し上げます。   当社は、食品流通業界において国内外に広く事業を展開し、安全で高品質な食品の安定供給を使命としております。その中で、面接時に語られたパートナーへの熱意やこれまでのご経験、ならびに面接時に拝見した適応力・責任感・対人調整能力は、当社の業務において大いにご活躍いただけるものと判断いたしました。――――』  その後には内定承諾の書類や、バース性の平等性のための注意事項などが書かれていて…… 「…………は、はは」  変な笑い声が出た。  智を自慢しすぎて落ちたと思っていたのに、まさかその惚気そのものが内定へ繋がったなんて。 「龍成さん? あの、大丈夫ですか? やっぱり……」  画面を覗き込めばいいのに、智はぎゅっと目を瞑ったまま祈るように指を組んでいる。  自分のことのように心配してくれる姿、それから知りたいのに人の携帯電話の画面を覗かない様子が愛おしくて……力を込めすぎてカタカタと震えている手をそっと包み込みながら、智の唇にちょんと口付けた。 「ぴゃ⁉︎」 「……智。やっぱりすごいな」 「えっ⁉︎ な、何がですか⁉︎」 「お前が可愛いおかげで内定もらったわ」  ふぇ⁉︎ って奇妙な声を上げる姿も可愛くて、オレはぎゅうぎゅうに智を抱きしめた。  駅で待ち合わせしてたけれど、迎えに行けなくなった と連絡があったのが二十分ほど前。  そこから駅前を歩き出して急に白壁が現れて、ずっとそれに沿って歩いている。  

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