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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 15
でっかい家? もあるもんだ……と歩いていくと、向こうから駆けてくる智が見える。
てってってっと一生懸命腕を振りながら駆けてくるけれど、あの足の長さなのに走るのが遅いんだよな と、思ってしまう。
「ぁ、あのっ龍成さんっ」
待って、止まってって言うけれど、それよりも先にオレが智の元に辿り着く。
「オレが走るから、智は慌てなくていいんだぞ?」
「そ、そ、そうなんですけどっそうじゃなくて」
智は珍しくあわあわと取り乱した様子でオレの体をくるりと反対に向ける。さっきまで歩いてきた道を振り返る形になって、オレは「?」って状態だ。
今日は初めて智のお家訪問の日だと言うのに……
「オレ、道、間違えてた?」
「や、ちが、そうじゃないんです! 今、ちょっとまずくて……」
そういう智の後ろに、パッと華やかな色が広がった。
それは白い壁と住宅というありふれた景色の中に咲く花畑のようだ。
「――――ちーちゃん? お客さま?」
声だけですでに美人だと確信させるような、涼やかで綺麗な声だった。
ふる と智の肩が震えて気まずそうに振り返る先に、ふわりと広がるのは色鮮やかに、美しく描かれた絵画のように佇む一人の女性がいた。
明るく陽に透ける茶色い柔らかそうに波打つ髪、化粧で作り上げたのではないとわかる顔立ちは白い肌の中に赤みが見えて、そのせいで透けるようだ。……華奢な体を着物で包み、花のレースがあしらわれた日傘をわずかに傾けて立つ姿は、人形のように可愛らしく完璧で……
「う……うん」
もぞりと大きな肩が動いて視界を塞ぐ……というより、オレと彼女の間に壁のように立ちはだかる。
「ちーちゃんのおともだち?」
風に乗って届くのは、春風のようにふんわりとした柔らかな声。
智の肩越しにちらりと見えたその人は、首をこてんと傾げて不思議そうにこちらを見つめている。
着物なのわかるほど華奢で小さくて折れそうな肩、オレの目の前を塞いでしまえるほどの体格をしている智とは正反対の存在だった。
「ちが、ぁ……ちがうの、礼(あきら)ちゃん。えっと……っ」
オレの前に立つ智が、ギリッと奥歯を噛み締めるのがわかった。
礼 は、確か姉の名前だと以前に少しだけ聞いた覚えがある。
様子のおかしい弟が気に掛かったのか、彼女は首を傾げたままこちらへ近づいてくる。
「あっ あ、あっ……」
姉が近づいてくるに従い、智の様子はますますおかしくなり……目の前に立たれて、「どうしたの?」と尋ねられる頃には、智の顔色は真っ青だった。
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