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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 22
「……龍成さん、ありがとうございます……僕、龍成さんに隠し事ばっかりで……っ」
「だから、お前は考えすぎだって言ってんだろ。隠してた全部がこれなら、オレにとってはご褒美でしかねぇよ」
オレは膝をついて、智の広い背中に腕を回した。
腕を回しきれないほどの逞しい肩。けれど指先から伝わってくる鼓動は、小鳥のように速くて、繊細で。
傷つきやすい繊細な心を、今までどれほど痛めつけられてきたのかと思うと胸が痛む。
ゆっくりと智の手を顔から剥がし、涙で濡れたその綺麗な顔を覗き込んだ。
「……智、お前がどんなにデカくても、どんなものが好きでも、オレの番はお前だけなんだよ。この部屋もこの匂いも……全部、オレが守りたかったお前そのものだ」
「龍成、さん……」
智の瞳に、オレが真っ直ぐに映り込む。
不安や怯えが消えてそこにあるのはオレへの深い深い愛情と信頼だけだった。
部屋中に満ちる柑橘系の香りが、智の感情の昂りに合わせるようにより一層甘く、濃密に溶け出していく。
本能を刺激する匂いだ。
ちくちくと理性をなぶられて削られて……目の前にご馳走があるのだと、口の中に涎が溜まる。
「……ねぇ、龍成さん」
不意に、智が掠れた声でオレの名を呼んだ。
大きな掌がオレの頬を包み込んで、吸い付くような熱を放つ。
「……僕、龍成さんがいてくれるなら、もう何も怖くないです。……世界中で、あなただけが僕を見つけてくれたから」
智がゆっくりと顔を近づけてくる。
10センチの身長差。
いつもはオレが背伸びをするけれど、今は智が自分の全てを差し出すようにして、少しだけ顎を引いてオレの視線に重ねてきた。
パステルカラーのクッションに囲まれた、智の空間はオレの知性とか判断力なんかをゴミ箱にぺってするには十分だった。
鼻先をかすめる甘い匂いと、智の温かい吐息。
オレは目を閉じてこの世界で一番贅沢な幸運を、唇で確かめるように受け入れ――――ようとした瞬間、引っこ抜かれた。
「 ヒェ⁉︎」
文字通り、子猫の首根っこでも掴まれるかのような手軽さでひっぱり上げられて、スポンと智の腕の中から放り出される。
智を見下ろすなんて滅多にできない体験を経験し……
「パ……パパ!」
甲高く上がった驚きの声は、目をまんまるにした智から放たれたものだ。簡単なその単語をうまく飲み込めないままのオレは引きずりあげられたまま部屋の外へと摘み出され、あっという間に庭へと放り出される。
「おい! 警備! 不審者だ」
尻を強かに打って涙目になったオレはどこから出てきたのかわからない黒服たちに取り囲まれて……
「始末しろ」
容赦のない一言に怯え上がる。
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