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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 28
えへへ と無邪気に笑う智は、父親のハートにクリティカルヒットを放ったことに気づかないようだった。
「……っ」
お父さんはバツが悪そうに顔を背け、大きな手で乱暴に自らの口元を覆った。
これほどの屈強なαが、息子の一言でここまで脆く崩れるものなのか。オレは、目の前で繰り広げられる「最強の親バカ」の露呈に、驚きを通り越して少しだけ親近感を覚えてしまった。
同時に、智が言った「ママのことを優先にして無茶ばかり」という言葉が胸に刺さる。
この要塞のような平屋を建て、黒服を従え、業界に睨みをきかせるこの男も、その根底にあるのは「番への愛」なのだとしたら。
「負けてられないな」
オレは咳払いをして威厳を取り戻そうとしている大きな背中を見ながら、そう呟いた。
あの意気込んだ日から早くも三年……
「こ……故郷の……空気だ……」
オレは久々に踏み締めた日本の地面(正確にはまだ建物だけど)に泣きそうになってその場でうずくまってしまった。
濃密な植物や土、動物の臭いのしない空気を肺いっぱいに吸い込んで、倒れ伏してしまいたいのをグッと堪えて立ち上がる。
今日、ここに……迎えに来てくれるはずだ。
オレの最愛が!
「――――龍成さん!」
耳に鋭く届いて鼓膜を震わせたのは、この世で一番大事な存在の声。弾かれるようにして振り返ると、向こうから駆け寄ってくる智の姿が目に入った。
真っ直ぐにオレのところに走って来れるように、黒服の皆さんが左右に立って道を作ってくれている。
そこをぽてぽてぽて……と記憶にある通りのフォームで駆けてくる智。
「智!」
サッと手を広げてこちらも智に駆け寄って……ちょっと背が伸びたんじゃ? って言葉を飲み込んで、「会いたかった!」と声をあげて抱きつく。
「龍成さんっ ……っ龍成さんだ! 龍成さんっ」
耳の傍でぐす と鼻を啜る音が響く。
この三年、オレも寂しかったけれど智も随分と寂しかったんだと、胸をギュッと潰されるような気持ちになる。
入社した途端、サン・オルディバ奥地、ンガル=トゥアのバルンガ族領「ズァ=カイ」に行ってくるように言われて二年だ。
なんだそこ? とか、何語が通じるの⁉︎ とか、地球上なの⁉︎ ってオレの戸惑いを置いて、あれよあれよと言う間に決定された海外駐在。それになんらかの外部からの意図を感じないでもなかったけれど、これくらいこなせないと……と暗に言われているようで。
「智……会いたかった……」
ぐっと力を込めた掌に感じる筋肉の感触。
それから何より、懐かしい爽やかな柑橘系の、智のフェロモンの匂い。
故郷の空気よりも何よりもまず肺いっぱいに吸い込みたかった香りだ。
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