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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 31

「ち ……智……」  周りを取り囲んでくれている黒服さんたちがハラハラと息を飲む気配を感じつつ、そっと頬に手を滑らせながら目尻の水滴を拭った。  指先で震える水の玉は美しくて、美味しそうで……思わず指先のそれに唇を寄せる。 「……あま」 「りゅ 龍成さんっそんなの口に入れたらお腹壊しちゃいますよっ」  それは好都合……と言うのは置いておいて、オレの体調を心配してくれるってことは、見限られたわけじゃないってことだと信じたい。 「智の涙ならいくらでも飲めるぞ?」 「……っ、……龍成さん、ひどいです……っなんでそんな優しい言葉をかけてくれるんですか? ……っ」  智の瞳から大粒の涙が次から次へと溢れ出す。  オレは慌ててその涙を指で拭ったが、智の悲しみは止まるどころか、決壊したダムのように激しさを増していくばかりだ。 「優しいって……当然だろ? 智のことなんだから、涙一粒だって大事なんだ」 「捨てる人間に優しくしちゃうんですね……」  捨て……?  思わず思考がフリーズした。  捨てないで! と叫んだのはオレだったはずなのに、いつの間にやら智の中では智が捨てられることになっている。  …………なんでぇぇぇぇぇ⁉︎ 「僕、知ってるんです。龍成さんが向こうで……その、現地の方との間に……お子さんができたこと……っ!」 「……は?」    あまりに予想外な単語に、オレの頭の中はホワイトアウト状態で未来の欠片も見えない。    今、なんて? 子供? 誰の? 「当たり前……だとわかってはいたんです、龍成さんはかっこいいし、お仕事もできるし、素敵な人だって! そんな龍成さんでも、ニ年以上もあんな遠いところにいたら、寂しくて誰かを支えにしたくなりますよね……。でもっでも……っ!」  智は、オレの胸元に顔を埋めて、嗚咽を漏らしながら叫んだ。 「その子も、お相手の方も、僕が一緒に面倒見ますから……っだから、僕を番にするのをやめないでください! 二番目でも三番目でもいいから、龍成さんの傍にいさせて……!」  智が叫んだ途端、周りの黒服さんたちが波打つように驚きに飛び上がる。  サングラスで見えないけれど、その目はオレを見て軽蔑の眼差しを浮かべているに違いなかった。 「立場をわきまえて……っでしゃばったりしませんから!」    まずい。これは本当にマズすぎる。  智が何を根拠にそんなことを言っているのか全く分からなかったが、オレは必死に智の肩を掴んで揺さぶった。 「待て! 待て待て智! 隠し子なんていない! オレがこの三年間、どれだけお前のことだけを考えて生きてきたと思ってるんだ!」

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