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落ち穂拾い的な 立ちはだかる壁、健在 2

 ビシッと背筋を伸ばし、両手を膝に置いて深く頭を下げる。  お手本のような姿勢をとるオレの頭上から降ってきたのは、呆れを含んだ重い溜め息だった。   「……結婚だと? 貴様はあの幻覚キノコの動画を、結婚披露宴のオープニングムービーで流されても同じことが言えるのか?」 「……!」  悪魔だ。この人、血も涙もない正真正銘の魔王だ。  あれは人生最大の汚点……と抗議しようとして気がついた。  つまり! めちゃくちゃ恥ずかしいけれど、オープニングムービーで流すことさえ了承すれば結婚は認めてくれると言うことだ! 「じゃあ公開します」  ぺろっと翻した掌の様子に、父親は一瞬だけ目をみはる。 「むしろ! 錯乱していても無意識下で智の名前を呼んでいた、純愛の証明として胸を張らせていただきます!」  ただ、後から聞いた惨状を鑑みるに、公開した途端警察のお世話になるんじゃないかって心配がなきにしもあらずで……  でも怯まずに真っ直ぐ見つめ返していると、相手がぱちりと目を瞬かせた。 「お前は本当にいいのか?」  小さな問いかけはオレじゃなくて智に向けてだ。  慈しみを含んだ声はわずかに震えるようでもあって、知らず知らずのうちに体に力が入る。 「もちろん、いいに決まってるよ! パパとママが出会って、『この人だ』って思ったみたいに、僕もそう思うから」 「親の庇護下を離れると言うことだぞ?」 「僕もう成人してるよ?」 「成人してても…………」 「成人しててもパパの子供は子供、でしょ? 僕ら兄弟、みーんなわかってるよ」  少しだけ肩をすくめて苦笑してみせる智に、父親は言葉をかけなかった。  むっつりと不機嫌そうに引き結ばれた口元は言葉を続けそうで続けないままで終わり、オレと智の結婚は許されたようだった。  とまぁ、これでめでたし にならないのがオレなわけで。  籍は入れたり式を挙げるのは智が大学を卒業してからだと言われ、それはそうかと思っているところにオレの新人研修が降って湧いた。  何せ、まともな新人研修を受ける前に飛ばされて、ジャングルでのサバイバルは身についたけれど日本の社会生活ってどんなだったっけ? 状態だ。  幸い向こうでの功績と飯野社長の罪悪感に助けられてクビになることはなかったけれど、同期からは「誰?」状態だし、なんだか腫れ物扱いな気がしないでもない。  まだまだ前途多難、立ちはだかる壁は高くて分厚そうだけれど、智が手をぎゅっと握ってくれるから、そんな壁なんてなんてことないように思える。 「龍成さん! 何してるんですか?」  にこ と満面の笑みで覗き込んでくる智は可愛くて、オレも笑顔になりながら結婚式で使う写真の入っているアルバムを差し出した。 END.

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