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落ち穂拾い的な 意外と壁は低い気がする 1
智が抱き上げるとまるでお人形遊びのようだった。
そっくりな艶のある黒髪とキリリとした目元、智にそっくりな…………
「姪っ子ちゃん⁉︎」
オレがあげた声に驚いたのか、智の腕の中の小さな手足がびくりとつっぱり……狼狽えるような声が漏れ始める。
「りゅ、龍成さんっ」
ひそめつつも咎める声に、今度はオレがびくりと体を跳ねさせる番だった。
「よしよーし、大丈夫だよ。すぐにママが来るからね」
そう言ってあやす姿はどことなく手慣れている。
赤ん坊が泣き出さないのを確認してから、智は小さな小さな存在の顔をオレに見せてくれた。
「弟の娘です。可愛いでしょ!」
「う……うん……」
日本にいる間には影も形もなかった存在に戸惑ってしまうのは、無理のないことだろう。
かつてオレが不審者として投げ出された庭に一戸建てが建っているなと思ったら、智はなんてことないように「弟が結婚したんで、パパが建てた」と返事をくれた。
家って、そんなポンポンと建つものなんだろうか?
「弟……信くん?」
「そう!」
信くんは、智をαにしたらこんなふうだろうなって感じの青年で、父親と違って気さくに話しかけてくれる子だった。
でも、サン・オルディバ奥地、ンガル=トゥアのバルンガ族領「ズァ=カイ」に行く前にはそんな雰囲気は影も形もなかったはず……
たった二年で……結婚までして子供も……
は?
オレはジャングルの奥地に飛ばしたくせに⁉︎
「可愛いですよね……赤ちゃん」
義理の父親から受けた理不尽な扱いに立ちそうになった腹は、智の少し恥ずかしそうな照れた笑顔によってあっという間に宥められてしまった。
オレ似じゃなくて、智似の小さな存在を考えるとそれだけでそわりと心が浮き立つ。
子供の性別にこだわりはないけれど、αの父親とαの子供は相性が悪いと聞くからΩだと嬉しい。
きっと智のように可愛い子に育つはず!
どんな服を着せようか、どんなおもちゃがいいだろうか、その前にまず名前だ! 男の子? 女の子? どちらでもいける名前に……いや、その前にまずしなくてはならないことが と、視線をチラリと智に向ける。
兎にも角にも、まずは結婚式だ!
「あ、信くんだ。おかえりなさい!」
智がパッと顔を輝かせてドアの方を向く。
そこに立っていたのは、以前よりも少し肩幅ががっしりとしているのにやつれ果てた信くんだった。
「兄さん……ただいま。……あ、龍成お義兄さん…………お久しぶりです……」
かつての気さくさはそのままだったが、信くんはよろめくようにして近寄ってくると、智の腕の中の娘を見てふにゃりと笑う。
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