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Aria of Echoes 16

「あ、あなた……?」 「この様子では食事どころではないな」 「え……ぇ……だ、だって、不審者が家に……」  そこで初めて母は玄関に立つ男が誰だか気づいたらしい。  最後に会った四年前は確かに今よりも背は低く、体も出来上がっていないことと、満足に食事を食べられないことで幽霊のようにヒョロヒョロとしていた。  けれど今では父親よりも高くなった背に、筋肉質で、肩幅も広い。αらしい自信の溢れる顔立ちは精悍な大人の風貌へと変わっていた。  もう、かつて虐げられ、影の薄い子供はどこにもいなかった。 「…………あ 」  そこでようやく母は凪だと理解することができたのか、気まずそうに振り乱した髪を撫で付けて萎れるように身を小さくする。 「……おかえりなさい」  それが二人のうちどちらに向けられたものなのかははっきりしなかったけれど、覇気のない声は今にも呪いを含みそうな陰鬱な音をしていた。  玄関で家政婦が割れた置物を片付けている音が響く。  リビングの真っ白いソファーに腰を下ろして、数年ぶりの家族の顔を眺めても、凪は何も感じなかった。  それよりもむしろ、置いてこざるを得なかった汐音のことが気に掛かり、今すぐにでも帰りたい気持ちが勝つ。 「   っ、で? あんたはなんで? 今日きたの?」  久しぶりに聞く弟の声は記憶の中のものよりも幾分低い。  父親の声に似ているような気がしなくもなくて、奇妙さを感じながら凪はゆっくりと首を傾げた。 「今日はお前の誕生日だろ?」  そう返した瞬間、リビングの空気が一気に冷え込む。 「思い出したからさ、思い出した限りは『おめでとう』の一言でも言ってやらなきゃって」  凪は肩をすくめて芝居がかった調子で「はは」とわざとらしく笑う。  この数年、顔を合わしたことも、電話をかけたこともない、そんな中でお祝いを言いに来るなんて……と、母と潮はあからさまに顔を顰めて警戒の様子だ。 「  凪、まともな服を着てくるようにと聞いていないのか?」 「なんの話ですか」 「潮、凪に服を貸しなさい。凪のその服では店に入れない」 「え⁉︎ あ、あなた……そんな必要は……」 「なぜ」 「なぜ……って……予約済みですし…………」  母は急に顔色を悪くすると、モゴモゴと口篭って視線を逸らしてしまう。 「四人で予約をとっているのだから四人で行って当然だろう」  父の言葉に母は青い顔のまま、言葉もなくこくりと頷いただけだった。けれど膝の上に置かれた握りしめられた手が、気まずそうに震えている。 「凪。参加するしないはお前の自由だが、これまでのように当日欠席はやめなさい、お店に迷惑がかかる」 「当日欠席?」 「毎回毎回、いい加減にしなさい」  

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