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Aria of Echoes 20
「頸を噛んで、噛んで、噛んで、 」
「何回噛むんだよ!」
「何回でも。汐音が発情して、オレのをここまで入れて 」
指がへそを示し、汐音はぶるりと体を震わせる。
「発情中のあんたに、溢れかえるくらい、長い、アルファ射精しながら、噛みたい」
「〜〜〜〜っ」
「首に消えることのないオレの歯形が付いたら、腕の中に閉じ込めて外に出さない」
「ちょ、ちょ……それは流石に重い……」
「じゃあ、足に鎖で勘弁してやる」
「余計に重くなってる⁉︎」
素っ頓狂な声を上げて笑う汐音を凪は抱え上げると、大股でベッドの方へと一気に歩いていく。汐音はベッドに降ろされながら、隠すつもりのない凪の行動にますます顔を赤くした。
筋肉のついた筋ばった腕が汐音をベッドへと縫い止める。
「オレは本気なんだけど」
「ぁ、っ、でも、っ……僕、年上、だし」
「そのうち、年なんて数えなくなるだろ?」
「出会ったばっかりだし……」
「出会ったばかりじゃなくなるのは何日から?」
「だって、だって、だって……捨てられたら、どうしたらいい?」
「は?」
低く唸るような声に汐音はじわりと目尻に涙を溜める。
凪がそれを拭うよりも早く、水の玉は転がり落ちて乱れた汐音の髪に埋もれていく。
「僕の全部を預けて、それでまた捨てられたらどうしたらいい?」
凪はその問いに尋ね返したい衝動に襲われたがハラハラと泣き出した汐音を前に、何も言えずにそっと指の背で涙を拭った。
ここで自分を信じられないのかと尋ね返すのは悪手だろうと、黒子のある唇をギュッと引き結んだ。
「僕はもう、失いたくないよ」
頑なな様子は海の底の白い貝のようだった。
下手に追いかければそのまま砂に潜り、二度と海の底から現れないとでもいうようで……
「じゃあ、手錠で繋いどく」
「え?」
「オレの右手と、汐音の足と」
ポカンとした様子は自分と凪の姿を思い描いている様子だった。
「…………ふ。何それ、右手繋いだら、どうやって絵を描くのさ?」
潤みながらも細められた両目からは、目の前にいる凪ではない何かを見る動きが消えていた。
名残のようにポトリと落ちた涙を、凪は拭わない。
「あんたを肩車して描こうかな。あんたちっさいし」
「ちっさい言うな」
ぽこ と拳が胸に振り下ろされるが、衝撃らしい衝撃よりもくすぐったさが勝る。
凪は握りしめられたままの汐音の手を取ると、ちゅ ちゅ と柔らかいキスを繰り返す。
冷たくなっていた指先が、凪の唇の熱に慰められてじわりと温まる。
「さ、言い訳はもうないな?」
「い……言い訳はいっぱいある……から、また考えておく」
汐音はつんと唇を尖らせて拗ねて見せるが、凪にとってそれはただのおねだりにしか見えない。
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