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Aria of Echoes 30
「だって、君のフェロモン……いい匂いなんだもん」
「だっ…………ぁあっ! くそっ! 可愛いな! いいよ、別に。服くらい」
「ほんと?」
「そんなちっちゃい男に見えるか?」
「君がちっちゃくないのは僕が一番よくわかってるもん」
とんとんとん と唇のほくろを少し冷たい指先で叩かれて、凪は恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「あっしまった」
怒りのままに放り込んだせいで必要以上に流し込んでしまった洗剤を眺め、凪はため息を吐いて今着ている服を脱ぎ始める。
どうせ掃除をして汚れているし……とぶつぶつと言い訳を重ねた。
「服、洗濯する?」
洗面所の入り口から半身だけを見せる汐音は普段の自由奔放な姿からはありえないくらいこじんまりと身をすくめている。
「……もう放り込むからな」
「ちが 違うよ、僕の靴下も洗ってもらえないかなって」
そういうも、汐音はもじもじと入り口に立ったままだ。いつもなら凪が駆け寄り、ひざまずきながら丁寧に靴下を脱がせるところだったが……凪はムッと唇を曲げたままだ。
「んっコホン! 凪、えぇっと、ごめんね?」
可愛らしく謝る汐音に凪は心が揺らぐのを感じたけれど、……けれど、どうしても受け入れられない事実に首を振った。
「えぇ⁉︎ ごめんってばぁ……」
凪はどこにもやりようのない怒りを目に滲ませたまま、仁王立ちになって汐音を見下ろす。あの巻き寿司を食べた日、少しいい感じになって汐音を押し倒した凪が見てしまったのは、スラックスの下から現れた、汐音には大きすぎる凪自身の黒いボクサーパンツだった。
ちゃっかりパンツまで身につけていたことに、そこから喧嘩……と言うよりは凪からのお説教タイムが始まり、不穏な空気のまま一晩経過してしまっていて……
「下着はとてもプライベートな物だし、衛生面もあるんだから履いたらダメだ」
「っ……だから、それはわかったって…………今は、靴下を洗って欲しいんだもん」
そろ と洗面所に入ってくる汐音の細い足にだらしなく絡みついている靴下を見下ろし、凪はため息を吐いた。
怒ろうが、なんだろうが、結局自分がこの男の前にひざまずくのは間違いがないのだから。
「ったく。このためにわざわざ靴下履いたのか? いつも家だと履いてないのに……」
「凪に喜んで欲しくって」
「?」
凪がきょとんと首を傾げると、汐音はサッと靴下……いや、ガーター用のストッキングを引っ張り上げる。
伸ばされるにつれて繊細なレース柄が現れ、黒い花が細く白い足を彩る花畑のようになる。
「わっ……な、に 」
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