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Aria of Echoes 39

「あんた。そんな大事なことを黙って……」 「ごめんっ」  いつも白い肌が血の気を失ってさらに真っ白だった。  暗い夜の空気の中では、それは発光しているように見えるほどだ。 「でも……知ったら、凪は……っ嫌になるんじゃないかって! でも僕はっ……それでも、凪と離れたくなくて! ほんのちょっとでもいいから、ちょっとだけでも長く……そばにいたかったんだ! 君のそばは気持ちがよくて、心が安らいで……手放したくなくて…………」 「…………」 「秘密を黙っていた僕は汚くて、嫌だと思う! ……でも…………次の恋人ができるまでの、処理道具でいいから……そばに、いさせて……っ何も望まないから、おねが  っ!」  顔に走った痛みに汐音は身をすくめた。 「……………………ばーか」  力強くつままれた鼻はズキズキと痛みを訴えているが凪は手を離す気配はなく、汐音はさらに涙が溢れるのを止められなくなる。 「わかった、処理道具に使ってやるよ」 「⁉︎ ぅっ……よぁ、ら、  」 「オレに次の恋人ができるまでずっといるんだ。わかったな?」 「ん……」 「年くって、よぼよぼになって、どっちかを看取らなきゃならなくなっても、墓ん中まで、そばにいてもらうからな」 「……?」  鼻から手を離されて、汐音はよろよろとよろめく。 「人が一生懸命考えた一世一代のプロポーズを断りやがって」  そう言うと凪は膝をついて小さな箱を再び取り出す。中の指輪は暗い中だと言うのに遠くの灯りを吸って神秘的なまでにきらりと光を放っている。 「汐音。オレの言葉はやっぱり変わらない、番になって、結婚してくれ」 「でも……僕は……」 「子供がいたってことを気にしない って、わけじゃねぇけど。それもひっくるめないとあんたと会えなかったってのが大事だ」  凪は小さな箱から指輪を取り出すと微かに震えている汐音の手を取って薬指にはめた。  細い指によく似合う華奢なインディゴブルーの石にポトリと雫が落ちる。 「すべて、オレに会うために経験しなきゃならなかったことだ。それを乗り越えて出会ってくれて、ありがとう」 「 っ、んっ……こちらこそ、あ……   」  ありがとうと続く言葉は途切れて、泣きじゃくる音に紛れてかき消えたけれど、二人はわずかな隙もないほどじっと抱き合っていた。  剥き出された頸に欲望を感じ、凪は白い肌にぱくりと食らいつく。 「ひゃっ」  愛しい男の腕の中でまどろんでいた最中にいきなり頸を噛まれ、汐音は思わず声を上げて飛び上がる。 「な、なに……っなんで噛むのっ」 「なんでって、早く噛ませないからだろ」 「そんなこと言ったって、まだヒートが来ないんだからしょうがないのに……」  指輪を贈った日から、汐音は凪と一緒に眠る時にはネックガードを外すようになった。

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