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Aria of Echoes 40
Ωにとって頸は一生を左右する場所だけに、そこをαに無防備に晒すことなかなかない。故に汐音の行動は凪への信頼や求愛の証とも言えたが、それと同時にどうしようもないほどの「頸を噛みたい」と言うαの本能を刺激するものでもあった。
「抑制剤、飲むのやめようか?」
「駄目。それだけは駄目」
カプカプと汐音の頸に噛みつきながら、凪は苦々しそうに言う。
絵本作家のMANOTOだと公表してから、汐音の周りは少し騒がしい。当然それに連れて人と関わることも多くなっていき……凪はそれは気が気ではなく、一分一秒でも早く汐音の首に番の証を刻みつけたかった。
Ωの発情期の性交の中に頸を噛む。
簡単なようでいて、抑制剤を服用している今現代のΩにとってはなかなかにタイミングの難しい条件だった。
「いつどこでヒートになるかわからないなんて、危なすぎる」
「じゃあ……急かさないでよ。次のヒートは夏休み明けくらいなんだか……ひゃっ」
いくら噛んでも発情期以外では番になれない。
よくよくわかっていても凪は目の前の白い頸に噛み付くのをやめられなかった。
「もう……ワガママっ子め」
「ワガママじゃない。汐音がヒートにならないのが悪い。これだけ毎日刺激してんのになぁ」
そう言うと凪は汐音が着ている自分のシャツを捲り上げて小さな赤い蕾に吸い付く。
最初は口に含むことすら難しい細やかな尖りが、今ではぷくりと膨れて赤く艶めき、懸命に触れて欲しそうに震えるようになっている。
凪は満足そうにそれを見て、「な?」と汐音に同意を求めた。
「そ、そんなの知らないよ! あ、そうだ。特別講義のレポート出した? なんでもいいから出したら単位あげるから……」
「じゃあ愛してるって書いて出す」
「ふざけてるんじゃないんだよ? 単位一つ足りなかったら卒業できないんだからね? 夏休みももう終わるんだからもっと真剣に……っ」
カリ と歯の間で敏感な乳頭を挟まれ、汐音は言葉を紡げず唇を噛み締める。
「真面目になってますー」
そもそも汐音の特別講義は四年次の生徒のための講義で、一年生である凪は本来受けることができない授業だった。
凪は、もしかして作品展に出ると言っているから学年を勘違いしているのかもしれないと気づき、汐音の誤解を解こうと口を開け――――
――――……――――……
携帯電話の呼び出し音に、凪は思わず天を仰いだ。
「なんだよ! なんなんだっ今は汐音との時間だっての!」
そう言いながらも携帯電話を覗き込み……叔母の名前を見つけて肩を落とす。
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