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Aria of Echoes 41
無視してしまいたい心と出なくてはと思う心がせめぎ合い、凪は結局後者を取った。
叔母は凪の保護者としてなにくれと手を差し伸べてくれているし、この学校に通う資金を提供してくれているのも海乃なので、機嫌を損ねたくはないと言う本音がある。
「おばさん?」
「凪! あなたのお父さんっどうなってるの⁉︎ 電話もまともにできないなんて!」
漏れ出す怒声は凪が慌てて離れたくらいではどうにもならず、汐音が驚いて飛び上がっていた。
凪は片手を立てつつ頭を下げてから、叔母の怒声から守るように部屋から出ていく。ワンルームでは逃げ場がなく、自然と外へと出て、手すりにもたれながら話を聞くことになる。
朝とはいえ下がる気配のない気温はほんのわずかな間の電話でも凪を汗だくにした。
むっとした空気と噴き出す汗に不快感を覚えながら、凪は辛抱強く頷きながら言葉を返し続け……言いたいことを吐き出し終えた海乃が用事があると言って通話を切り上げるまで相槌を打ち続けた。
「お疲れ様。……前に言ってた叔母さん?」
「うん」
汗を拭いながら戻ってきた凪に汐音は冷たい水を渡し、少しだけ様子を伺う表情を作る。
「どした?」
「親がわりの人だって言ってたから、ご挨拶に行かなきゃと思って」
「挨拶?」
きょとんと繰り返した凪に汐音はびくりと肩を震わせ、もじもじと薬指にはめた指輪を弄った。
「結婚するなら、きちんと挨拶しておきたいなって思わない?」
「え? あ? そうなのか⁉︎」
「そうなのって……そうでしょ?」
「親」の概念が薄い凪は、人生の節目であっても親に会いにいくと言う感覚がわからず、すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
本来ならば番を持つ、結婚をする と言う出来事を親に話すべきなのだと、呆けた頭で考える。
自分がいてもいなくても、何年も顔を見せなくても気にしない両親に会いにいくと言うこと自体が考えの範疇外だった。
「ご、ごめん。全然頭になかった……じゃあ汐音のお父さんたちに挨拶しに行こう!」
「うち? …………うち……は、 」
あはは と笑って汐音は首を振る。
「僕は施設育ちで……その施設ももうないから」
「っ! そか。じゃあうちも挨拶に行かなくていいよ。叔母さんにはまた伝えておくけど、両親はオレに興味はないだろうし」
「そんなこと……」
「家は弟が継ぐし。それでいいんだよ」
「…………」
汐音は何かいいたげに口を開き……結局何も言えないままに唇を引き結ぶ。
甘やかだった起床時の雰囲気はカケラも残っておらず、重苦しい気まずさに互いの視線すら合わない。
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