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Aria of Echoes 42

「凪……こう言うことは、いい加減にしておくのは良くないと思う」  汐音は指輪をじっと見つめ、その深い青色に背中を押されるように、毅然と顔を上げた。 「子供からどうでもいいと、言われると悲しいと思う」 「それは……」  凪は今、自分が酷くデリカシーに欠けたことを言いそうになって慌てて口を閉じた。 『それは、自分が子供にそう思われたくないからか?』  そんな言葉を自分が言わずに済んだことに凪はほっと胸を撫で下ろす。  人生の指針となるほど、子供のことを気にかけている汐音にとって、親が子供に興味がないと言う事実はあり得ないことだし、子供が親のことを気にかけていないなんて信じたくないことでもあるのだ と。 「…………凪、僕、十五歳で産んだんだ」 「は?」 「それで、子供を育てられないから養子に出して、会えなくて……親はいなくて……会えなくて、だから僕には会いに行ける血縁がいる凪が眩しく思えるよ?」 「…………」  自分を諭そうとして汐音が話した事実の殴りつけてくるような衝撃に、凪は衝動的に汐音の真正面へと立ち塞がる。 「十五?」 「え?」 「十五で産んだって」 「ん……そんなことよりも、ご両親のことだよ。もう心を決めてしまっているのに何をって怒られるだろうけど、それでも挨拶をしに行こう、ね?」 「そんなことどうでもいい! あんた……十五って……子供じゃないか!」  成人を迎える前のαとΩのためにパートナーシップ制度が導入され、様子を見ながら年齢の引き下げを計画されてはいたが、それでも十五歳は若すぎる。  普通ならあり得ないことに、凪は親に挨拶しにいく等の問題のことをすっかり頭からはたき落としてしまった。  どんなαが、まだ幼いと言ってもいい汐音に子供ができるような行為をし、捨てたのか…… 「——っ」  ぎりり と奥歯がなった。  その相手は同級生だったのか? それとも年上だったのか……汐音の体を知り尽くしている凪は、もし襲われたとしても抵抗らしい抵抗はできなかっただろうと考えに行きつき。 「っ! 凪っ……く、る  っしいよ……」  自分の歯軋りに混ざって苦痛を訴えてくる汐音の声。  目の前が真っ赤になるような怒りのせいで声が出ず、凪は制御のできなくなった怒りに全身を燃やされながら、髪をかきむしった。 「凪っ」  鼻にかかるような声は泣き声だ と、炙られて燃え上がる意識の中でもはっきりと凪は理解すると、床に倒れ込んで苦しげに体を丸めている汐音を見て、一瞬で血の気を引かせる。 「汐音! どう……」  どうしたもこうしたも、凪は全てが自分のせいだと痛感していた。

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