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Aria of Echoes 44

「どっちにしても、そのアルファがクズだってことだな」 「んふふ、僕も彼も子供だったんだって、今は思うよ」 「でも、あんたはちゃんと受け止めたんだろ? 放り出したクズと一緒にすんな」  凪の大きな手で擦り続けたからか、汐音の指先はじんわりと温もりを取り戻しつつある。 「君だって、今、子供ができたんだって言われたら混乱するだろ?」 「オレ? オレは……混乱するよりも、汐音を独り占めできなくなることに嫉妬するかも」  もごもごと口の中で言葉を詰まらせる凪はバツが悪そうに項垂れた。 「…………あんたが望むなら、子供を探そうと思ってる」 「え……え⁉︎」  汐音の体が跳ね、色素の薄い両目がはっと見開かれる。  潤むようにゆらりと揺れた様子はそのまま汐音の迷いなんだろうと、凪は返事をせかさずに唇を引き結ぶ。 「嘘……」 「なんで嘘言わないとなんだよ。オレはあんたに嘘は吐かないよ」 「ちが そんな意味じゃなくて……そうじゃなくて……」  やっと温まり出した指先が再び血の気を失い、そらされた横顔に喜びの色は見えない。  凪はどこかでこの提案をすれば汐音が手放しで喜ぶだろうと思っていただけに、萎れるようにうつむいてしまった姿に戸惑いをみせた。  怒り? 失望?  凪はうまく感情を汲み取ることができず、汐音を抱きしめる手に力を込めて、謙る犬のようにその顔を覗き込むしかできなかった。 「………………僕、名前も知らないんだ」  産まれて、抱くこともなく離れた子供の重さも、温もりも、匂いも、汐音は何一つ知らない。  どこに貰われていったのか、性別がどうだったのか……凪が知っているのは、自分から切り離された瞬間に赤ん坊があげた力強い産声だけだった。  熱をもって張り詰めた乳房から直接乳を含ませることも、汚れたおしめを変えたこともない。  その笑顔を見たことも…… 「そんな人間が、親なんて名乗れないよ。ましてや、僕と縁が切れるようにすごく慎重にやり取りをしていたから、子供は養子とは教えてもらってないかもしれない。そんな子に、今更どの面さげて『貴方を産んだ者です』なんて言えるの……?」 「…………」 「僕は、子供の幸せを望んでいるから……憎しみなんて、知らずに育って欲しいよ」  汐音はますます萎れて、小さくなるように膝を抱えて身を硬くしてしまう。  まるで自分がこの世界で恥ずべき存在なのだと、だから小さく小さくなって消えてしまいたいとでも言っているようだった。 「じゃあ……子供とは…………」 「僕は、会わない。うぅん……会って、その子の幸せを壊したくない」  

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