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Aria of Echoes 54

 二人はそう遠くない未来の話をしながら軽やかに歩く二人の間に、突然携帯電話の着信音が割り込む。 「っ!」  凪はサッと画面を確認して……一瞬だけ迷い、そのまま携帯電話をしまいこんだ。尻ポケットの中で震え続ける音を聞いて、汐音は伺うように首を倒す。 「今日は……いい。幸せな時間だけ覚えてたいから」 「おばさん?」 「うん」  それから長い間鳴り続けて、やがて夜の空気に溶け込むように沈黙する。 「……おばさん、はさ、オレと同い年の子供を亡くしてるらしくて。だからオレのこと、気にかかるんだって」  凪のポツンと呟くような言葉に、繋いでいた汐音の手に力がこもった。 「でも……だからって、毎日電話してくるのは……」  汐音は少し言いにくそうに言葉を選ぶ。凪と過ごす長くない時間の中で、どれだけ叔母からの電話だと言われたのかを思い出し、わずかに眉間に皺を寄せる。  凪のことを我が子のように思っているのだとして、その頻度で電話をかけるものなのかと疑問に思いつつも、自分の中にそれが普通なのか普通じゃないのか判断する材料を持っていなかったからだ。 「おかしいことなんだろうなって思うけど……オレを唯一気にかけてくれた人だし」 「……うん」  歯切れの悪い凪の言葉に汐音は頷いた。施設出身の汐音にとって家族のあり方はわからなかったけれど、寄る辺ない身に寄り添ってくれる温もりの有り難さは痛いほど知っていた。  それが生きるための支えになることも、よくわかっている。  汐音は弾かれるように凪の体を抱きしめた。  夜気の少し湿り気を帯びた空気が二人の周りで蟠り、沈黙を深くしていく。 「…………僕と、この子がいるよ」  散々探して絞り出した言葉はどこかチープなお決まりの言葉だった。汐音は少し恥ずかしそうに凪の胸板に額を擦り付ける。 「きっとお父さん大好きっ子になるよ」 「なんで?」 「僕がなぁくんを好きだから。ね?」  自慢げに言うと汐音は「帰ろう」と続けて凪の腕を引っ張った。  凪は弾かれながら、「オレも好きだ」と言い返し、それに汐音が「僕の方が好きだ」と言い返す。浮かれを隠せない会話が再び響き出した携帯電話の着信音に邪魔されたのは凪のアパートに着く直前のことだった。  見知らぬ番号からの着信に怪訝な表情をしながらも、それが長く長く響くに従い二人は顔を見合わせて眉間に皺を寄せる。 「……きっと、セールスだよ」 「うん……」  そうは言いつつも、二人の間に響く音は止まない。  次第にお互い伺うような視線になり……

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