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落ち穂拾い的な 年齢
ポトン とペンを落として、汐音はぶるぶると震え出す。
「き、きみっ」
顔を青くしている汐音はそろりとオレから一歩後ずさる。
ほんのわずか、数十センチ距離が広がっただけで……オレは、耐え切れそうになかった。急いで手を伸ばして腕を掴み、「急に動いたら危ないだろ」と注意を促す体で汐音を引き戻す。
腕の中にすっぽりと収まる体は、以前よりも少しふっくらとしているのか重みが増しているようだった。
「お腹が大きくなってバランスとりにくいんだから」
「う……だって、びっくりしたんだ! 君が……」
視線が机の上の紙……先のオレが記入を終えた婚姻届に注がれている。
「君がこんなに年下だなんて思わなかった!」
「年下って……」
「今年で卒業じゃなかったの⁉︎ だから僕の授業を受けなかったんだな⁉︎」
「え? そりゃ、あれは4年次の授業だから」
けろりと返してやると、汐音は拗ねたように唇を尖らせてぶつぶつと呻いている。
————この人は、最初にオレの年齢を知っていたら、恋愛をしてくれただろうか?
「だって……あぁーっなんてことしちゃったんだっ」
「なんてことも何も、だからこうやって責任とってくれるんだろ?」
そう言って細い指にペンを持たせると、不安げに先端を揺らす。
「そりゃ……そうだけど……………………————とは思わなかった…………」
呟いた言葉は微かすぎて、汐音は意識して喋ったものじゃなかったんだろう。
けれどオレにはしっかりと「子供と同い年」としっかりと聞こえていた。緑の枠の数字を追って、誕生日の部分を見てはっと息を詰める。
オレの生年月日は、どう処理されたんだろうか?
息を詰めて、紙を引き寄せる汐音の動向を伺っていると、大きなため息をひとつ吐いてサラサラと書き込み始めた。その動きは淀みがなく、オレの項目を見て動じている様子はない。
「冬生まれかぁ……いいなぁ、ふゆちゃんと一緒か」
「じゃあ、次の子は春産まれに『調節』しようか?」
「は? ……は⁉︎ 君は何を言ってるの⁉︎」
————照れながらも、少し想像しているのか視線が泳いでいる。
「そうしたら平等だろ?」
「平等……だけど」
そういうと汐音はお腹を押さえてぎゅっと眉間に皺を寄せた。
健やかに動いていた呼吸が詰められて、手足に力がこもる。
「汐音……」
「っ……まだ…………これを出すまでは頑張る」
痛みがすぎて眉間の皺が緩やかに解けると、汐音は残りの項目をすべて埋めて満面の笑みを浮かべた。
「これで、僕たちは夫夫だね!」
「提出したらな」
「もー! そういうところ、融通効かないなぁ!」
やはり唇を尖らせて抗議をする汐音を連れて、オレは役所へと向かった。
END.
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