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落ち穂拾い的な この本の作者です 1

 差し出されたのは繰り返し繰り返し読んだのがわかる、少しくたびれた絵本だ。  丁寧に扱ってはくれているのだろうけれど、触れる以上どうしようもない劣化というものがある。  それが見たくて、今回のサイン会は絵本を購入してもらうんじゃなくて、持ち込んでもらうことにした。  中にはボロボロになっているのもあるけれど、テープで直してそれでも手元に持ってくれているのが嬉しい。 「あ、あのっ! この本! 大好きでっ! あ、オレじゃなくて……あ! オレも好きなんですけどっ……オレの番が……ぅ、……」  僕にそれを差し出した少年はそういうと恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。体が細いからだろうか? それとも少しクセのある毛が頸にかかっているからか、彼の雰囲気は華奢で頼りなく見える。  「番」と言葉が出たのだから、幼く見えても凪と同じくらいなのかな と、真っ赤な顔を覗き込んだ。 「すみません……サイン会は初めてで……緊張しちゃって……」 「じゃあ僕が初めて?」 「はい。オレの番がこちらの絵本をすごく気に入っていて、ずっと大事にしているんです! オレは、読み聞かせで内容全部覚えちゃって……」  あわあわと言葉を詰まらせながらも、自分と自分の番がこの絵本を……「金の王子、銀の王様、銅の騎士」を読みながら、大事な時間を過ごしているかを語ってくれた。  恥ずかしそうにしながらもその目は愛に煌めいて……  僕の作品が、  僕が、自己満足のためだけに書いた作品が、  誰かの幸せな時間を形作っているのだと、胸を苦しくさせる。  それを振り切るように、サインを書いた。 「二人に大事にされて、僕も嬉しいです。パートナーの方は?」 「パートナーは、ちょっと来れなかったんですけど……」 「そうなんですね、お会いしたかったなぁ」  そういうと目の前の少年は少し困ったような笑顔を浮かべた。どうしたんだろうと思いつつも、僕は事前に紙に書いてもらっていた名前を綴ろうとした。 「……これはパートナーの名前?」 「はい!」 「君は?」 「オレ……ですか?」  戸惑いつつも、彼は「しずる」と答えてくれた。「雪虫&しずる」と書き込んで、お似合いの名前だとにっこりと笑う。  僕と凪の名前も海にちなんだ名前だし、この少年たちに負けず劣らずの似合度合いだろう。 「あ……ありがとうございます!」  名前は一人分としていたから、本当ならダメなんだけど……二人の思い出の本なら、二人の名前が書かれている方が嬉しいと思う。少年が繰り返し礼を言いながら離れていくのを、ほっこりとした気持ちて見送る。  

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