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雪虫6 3
「……」
セキは、あの日、大神のしたことを許せるんだろうか?
饗宴のために服を剥かれて大勢の目にさらされて、怯えて真っ青になっているのに獣のような奴らに囲まれて……その時の恐怖も大神への愛のためって言って、なかったことにできたんだろうか?
普段は散々威張り散らす大神の、結局は権力に屈する姿に対してオレは心底怒りを感じていた。
セキのことに対して独占欲を見せていたのに、あっさりとセキを差し出してしまえた大神も、そんなことをされても好きだから目を逸らすセキも……
「オレは、好きなら守るべきだと思う」
「え? えっと……エチケットとか、かな?」
すっとぼけられて、オレは我慢ができなかった。
「そうだな!」
つっけんどんに言い返し、帆布地の鞄にテーブルの上のものを乱雑に突っ込んだ。編みかけの指輪とか、ちょっとまずかったりもするんだけどそんなことに構っていられない。
「しずる?」
「雪虫が起きる時間だから!」
叩きつけるように言うと、セキはびっくりした顔で「雪虫なら起きてたよ」と言ってくる。
「は?」
「食堂に来る前に雪虫の部屋に寄ってて……しずるを呼んできてって言われて……っと、ごめんね? 言うのが……遅くなって」
急に不機嫌になったオレに、セキはちょっと引き気味だ。
そのとぼけた顔がますますオレを苛立たせるって、わかっていないようだった。番にして欲しい相手にあんな扱いをされて、どうしてなかったように過ごせるんだろう?
オレは、好きな人には笑ってて欲しいし、傷ひとつついて欲しくない。そのためにできることならなんだってするし、立ち向かうなら立ち向かう!
オレは雪虫が幸せだと思ってくれるならなんだってできる!
好きだから! 愛してるから! 大事だから! 大切だし、特別で唯一で、オレの……番だから!
「っ……じゃあな」
お前騙されてるんだよ、都合よく使われてるだけだよって叫びたくなったのを飲み込む。
オレの言葉でセキが大神から離れようって決心したとしたら、その報復はオレに向くだろうから……オレは、友情よりも保身を優先した。
なぜなら、オレの番である雪虫は、オレがいないと死んでしまうくらい体が弱いから……
部屋に入った瞬間、むわりと鼻をついたのはセキの体に吹き付けられていた「フェロモン香水」とやらの臭いだ。
「ぅ……」
いつもは入ってすぐに「雪虫!」って名前を呼んでるから、それをしない段階で雪虫はいつもと違うってことを感じたようだった。
「しずる、おかえりなさい。……な、なにか、気になる?」
気になるならないの話じゃなかった。
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