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雪虫6 5

 だから雪虫は研究所から出れないし、ここがどこよりもセキュリティがしっかりしている場所だから出ることもない。  窓のない空間は、いくら風景ポスターを貼ったりタペストリーで飾りつけたりしたとしても息苦しく、オレには窮屈な感じがする。ただ、雪虫はそのことに対して何も思っていないようで、この広くない部屋にいても気になっていないようだ。  人の付き添いがあれば、研究所内なら出歩けるとはいえ、雪虫の世界は驚くほど狭い。   「…………」  部屋に戻って、すんすんと鼻を鳴らしながらフェロモン香水の残り香を確認すると、随分薄まっている。  雪虫は肌も弱いから、香水を直接肌につけることはないだろうから、服さえ洗ってしまえばこの問題は片付きそうだ。 「———— しずる? まぁだ?」  風呂場から声をかけられて、オレは慌てて着替えを持って戻る。 「わっ」  慌てて駆け込んだ先、立っていたのは一糸纏わない雪虫だった。  真珠のような柔らかな白い肌が自然の隆起で光を放つ。その姿は人ってよりももっと神々しいものだから、思わず土下座して拝み倒したくなる。 「ふく、ぬいでまってたよ」 「う……うん、うん」  うんうんと繰り返しながら、ふらふらと近寄って行って……触る直前でなんとか踏みとどまる。  番だし、雪虫の発情期にはやることはやってるんだから今更だと思いつつも、やっぱり目の前に晒されると誘い込まれる虫のように近寄りたくなってしまう。 「しずる?」 「急いでお湯溜めるからな」  触りたいのをグッと我慢して、小さな浴槽にお湯をはりつつ……堪能したい雪虫の裸を隠すためにパーカーを脱いでかける。  このまま勢いに任せて抱きしめてしまいたいけれど、やっぱりグッと我慢。  だって、まだあの香水の臭いがぷんぷんしてて、純粋に雪虫の匂いだけを堪能できないから。  とりあえず汚れ物を入れる袋に突っ込んで力の限り固く口を結ぶと、香水の臭いは随分とマシになった。 「んー……」  雪虫はオレのパーカーを羽織ったまま、どこか不満そうだ。やっぱりフェロモン香水のことを突っ込んで聞くべきなんだろうけど……  ちらっちらっと盗み見るようにこちらを見る、くすぐってくるような視線に耐えきれなくなって、仕方なく「変な臭いのことだけど」って切り出した。  途端に煌めく瞳を見ると、これを聞いて欲しくてたまらなかったらしい。 「それで? それで?」  セキが悪い影響を与えているなってわかっているけれど、二人はオレよりも長い付き合いだし、仲がいいし、それでなくとも少ない雪虫の交友関係に口を出して、世界を狭めたくない。   

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