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雪虫6 8
雪虫にセキの身に起こったことを話したくなかった。
ほんのわずかでも悲しんで欲しくない。二人は友人だってこともわかっているし、Ω同士でオレにはし難い話をしていることも知っている。
あえて言葉をつけるなら、セキは雪虫の親友だ。
それが、オレをちょっとだけモヤつかせる。
友人がいることは悪いことじゃないし、セキが雪虫に害を与えるような存在じゃないのはわかっているけれど、それは逆に言えばオレ以外の親しい人がいるってことだ。
これがくだらないαの独占欲だ。
オレ以外の人間に感情を揺さぶられて欲しくない。
雪虫の愛情や感情の向かう先はオレだけでいい。
他の何も、間に挟みたくないし、何とも雪虫を分かち合いたくない。
「なんもないよ」
「…………」
チャプ と音がして、雪虫が小首を傾げてオレをじっと見つめる。青い……蒼い蒼い吸い込まれそうな瞳が、すべてを見通す叡智さを持ってオレを責める。
「……少し、気まずい気がしてる」
「どうして?」
「………………………………」
αは、番に逆らうことなんてできないんだ。
「……セキが、自分を大事にしてくれないから」
「そうなの?」
「う……ん」
「セキが自分を大事にしないの、みたの?」
見た……けど見てない。オレは結局あの後、セキがどうなったかを知らなかった。でも直江が濁すようにセキのことが心配だと言っていたのを聞いていたから、想像で補完してしまった部分もあるとは思う。
でも……
「はっきりとは見てない、かも」
「じゃあ、だいじょーぶ」
セキがよくするように、ニッカリと笑うと細い指でピースを作る。
オレは、雪虫が「セキに何があったの⁉︎」って聞いてくるのだとばかり思っていたから、肩透かしを食らった気分だった。
雪虫のセキへの感情は軽やかで……セキのことをよくわかっているから心配していない、と言っているような気がした。
「む……」
「しずる?」
なんか、セキのことをよくわかってるな なんて嫉妬丸出しのことを言いたくはないし、だからと言って黙っているとモヤモヤしてしまう。
オレだけを見て! って叫んでしまえたら一番楽なんだろうけど。
「しずるー? 雪虫は、ちょっとあつい」
ふぅ とため息のような呼吸と共に吐き出される言葉は、雪虫がのぼせ始めている証拠だ。お風呂の湯で圧迫されて呼吸がし難いから、入浴が長くなると疲れて息苦しくなってくるようだった。
オレは慌てて雪虫を抱き上げるとベッドへと運び込む。
「ごめんごめん! 変な話で長湯しちゃったな」
「ん……へいき」
そういうけれど、雪虫の全身はほんのりピンク色に仕上がり、寝かせたベッドから体を起こすこともできないでいる。
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