332 / 333

雪虫6 9

「ごめんな。すぐに水を持ってくるから」  水と言いつつも、冷たい水は体に悪いから、お湯を沸かして湯冷しを加えたものだ。  長湯した後の冷たい炭酸を飲み下す気持ちよさも、雪虫にとってはただただ強すぎる刺激でしかない。  オレの感じている世界と雪虫の身を置いている世界はどうしても分かり合えないところも多くて、寂しく思うけれど同時にそれを理解して受け入れてってステップのためだと考えると嬉しくて……  つまり、雪虫に関係することはどんなことでも巡り巡って、プラスの考えに行き着くってことだ。 「ぷはっ」 「ゆっくりな。気持ち悪くなっちゃうからな」  一気に飲めないように差したストローから、こくこくと数口飲んだ雪虫は満足そうだ。  雪虫が一息ついている間に、オレは雪虫の体を拭いて保湿をしつつ肌に異常な部分がないのかチェックして……甘い香りがする肌を舐めるように見なけれなならない。これは、ちょっとした拷問だなっていつも思ってる。  かぶれも傷も見つからなかったから、ほっと胸を撫で下ろす。 「着替えはどうする?」 「きょうは、もうお出かけしない?」 「うん。二人でゆっくりできるよ」  雪虫が眠っている間に、畑の世話も食事の準備も洗濯も終えてきた。今は大神からの無茶振り……じゃなかった、任務は何もないから、大人しく待機しながら格闘訓練を受けるだけだ。 「気になってるって言ってた映画、一緒に観ようか?」 「うん!」  パッと元気に起き上がるから、よっぽど嬉しいんだと思う。  オレからしたら、ちょっと小さい子が見るような映画だなって感想が出ちゃうんだけど、文字を覚えたての雪虫にはそれぐらいがいい。  ……雪虫が、文字も書けず、読めなかったのは……病弱だからかなって推察してる。 「じゃあ湯冷めしないような服を持ってくるな」  ささっとバスローブで雪虫の体を隠してから、小さなクローゼットの方へ向かう。体が冷えるのは問題だけど、暑すぎるのも問題だ。 「やっぱり、いつも通りショールで調整して……「しずる! 雪虫はこれが着たい!」  背後から飛びついた雪虫はもちろん裸で、オレは一瞬で彫像のように動けなくなってしまった。  クローゼットを覗き込む体勢でじっと……服を挟んで、雪虫の肌の体温がじわりと染み入ってくる。 「こ、こ、こここここれ?」 「うん、しずるが、よろこんでくれるから」 「——っ」  喜びますとも!  だって雪虫が差したそれは、初めての発情期を迎えた時に雪虫が身につけてくれていた透けるような生地のキャミソールだから!

ともだちにシェアしよう!