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雪虫6 16
そう返したうたはため息をつく。
『とりあえず、今日はもう休んだほうがいいわよ。詳細は…………私も知らないし』
そこの言葉に反射的に「嘘だ」と言いそうになったけれど飲み込んだ。
盗まれたデータが雪虫のものじゃないと知っている段階で、うたは今回の騒動の大部分を知っているんだと思う。オレよりも先に瀬能の助手として働いて、オレが想像するよりも瀬能の業務に関わっているんだろう……オレからの電話に出て、雪虫に被害がないってことを伝えるのが精一杯だったのかもしれない と。
『…………それで、いい?』
「……うん」
電話を切る前によくやくごめんって謝ると、小さく笑う気配だけが返された。
嘲笑ではなく、困った小さな子にするような苦笑はなかなか消えずに耳の中にずっと残っていた。
研究所の門が開けられるのが待てず、固く閉じた鉄門の前でじっとうずくまって……もしかして、立ち入り許可すら取り消されているかもしれないなんてビクつきながら、いつも通りの手続きを経て研究所の中に入る。
雪虫の部屋へ駆け込むか、それとも瀬能の部屋へ行くかを迷って、死刑台に登る気分で瀬能の部屋んだと向かう。
「……これで、クビになったら……どうなるんだ?」
この研究所の立ち入りは本当に厳しく制限されていて、かなりの金額を出資している大神ですら、出入りに自由がなかったりする。そんな場所で、オレがこうして出入りできているのは瀬能の助手ってことが大きい。
雪虫の番ってだけじゃ、正直立ち入りを許可されるかどうかは微妙だ。
そうなった場合、どうなる?
雪虫はここから外に出ることはできなくて、オレが入れなくなったら?
「…………っ」
会うことすら難しくなったら?
考えたくもない話だ。
オレの人生は雪虫中心に回っていて、中心のなくなった世界なんて成り立たない。
壊れて、崩れるだけだ。
「————っ、っ……せ、瀬能先生っ! 今回の件! 本当に申し訳ありませんっ! こんな大事になるとは思わなくてっでもオレっ本当に扉の前に居ただけで、扉には触れもしてなくて、今回のデータの持ち出しがあったとかそんなことには全然関係なくて、 」
普段瀬能が使っている部屋を開けると同時に床へと額をつける。
この雪虫と離れなくても済むなら土下座だろうが切腹だろうがなんだってやってやる!
「何が起こったのかオレ自身もさっぱりで! だからオレはむじ………………」
返事のなさというか、気配のなさに視線を上げると、いつも瀬能が仮眠に使っている椅子が空っぽだった。
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