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雪虫6 17
なんだいねーのかよ とは声に出せなかった。
ホッとした反動でそのまま床にへたり込んでしまったからだ。普段なら絶対にしないだろうけど、でも今はそれが心地いい。
「…………オレ、どうしたらいいんだよ」
「とりあえず謝罪じゃない?」
呻き声にタイミングよく返された言葉に、オレは慌てて顔を上げる。
目の前には星空の布を使ったフリルのついたスカートが揺れて……もうそれだけで、誰だかわかった。
「うたかよ」
「ちょっと! 心配で探してたのに! なんなの⁉︎」
「悪かった」と口の中でもごもごと呟きながら立ち上がり、仁王立ちになっているうたを見てみれば、目の下に青い翳りが見える。
元々色が白いせいか、青白く見える顔色がいつもよりもさらに沈んでいるようだった。
オレが昨日睡眠を邪魔した……から?
「瀬能先生は? 知ってる?」
「先生は、…………」
言いにくそうに口ごもったけれど、うたは「会議に出ているの」と教えてくれた。
それがなんの会議なのか、何を話し合っているのか……ぼんやりとした推測しかできないオレは、落ち着かずに部屋を見渡す。
「うた。お前が知ってること全部教えてくれないか?」
「…………」
青い顔色で、うたは随分と迷っていたようだった。
「犯人はわかってるの。あなたが何もしてないって証明されたみたいに、その人が出入りしていたのが監視カメラに映ってたから」
「それ……」
ここで、オレはうたの様子を改めて見てみて……どうしてこんなに気まずそうにしているのか、そのことに気がついた。いや、気がついたっていうよりも、やっとそこに気を向けられるようになった。
たまたま侵入者があったってだけなら、うたはこんな表情をするだろうか?
じわりとシミになるような黒い予感が広がって、オレは伺うようにうたの顔を覗き込む。
雪虫とは違うけれど、繊細な作りのΩらしい顔が血の気を引かせて……
「…………直江さん?」
返事はなかったけれど、ゆらりと揺れた大きな瞳が答えだった。
「なん……? なんで?」
もしかして、オレがデータ保管庫に入れないってわかってたから、代わりに?
あくまで雪虫のデータが見たいというのはオレ個人のわがままで、直江はそれに手を貸してくれたに過ぎない。昨日の自分への扱いを考えれば、直江はどんなことになっているんだろうと思うと血の気が引いて……
「……いや、でも…………雪虫のデータが持ち出されたんじゃないんだよな?」
「ええ」
雪虫のデータじゃない。
じゃあ、誰の?
雪虫のデータを持ち出そうとして、違う人のデータを持ち出してしまったんだろうか?
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