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雪虫6 20

 オレにはなんてことないけれど、雪虫にとっては中庭に出る機会があるのは少なくて……  中庭に出たからといって、何かするってわけじゃない。雪虫にとってはボール遊びだけじゃなく、陽の光に当たり続けることですら重労働だし体に負担をかける。  そんなでも、雪虫は中庭に出て、オレと太陽の下で風を感じることを嬉しいと言ってくれる。  オレは、そんな雪虫の幸せも奪ってしまったってことだ。  安易に、雪虫のすべてが知りたいって思ったから。  直江に言われて、コソコソと調べようとしたから。 「雪虫」 「うん?」 「ごめんね?」  ぱち と瞬く瞳はオレの罪を断じてくれるだろうか? 「どうして?」 「……雪虫の、全部を知りたくって……」  普通の番でもそんなことは無理なのに……相手の、生まれてからの呼吸の数や心臓の打った数、視線を動かした回数も、瞳孔が開いた瞬間の回数まで……オレは知りたくてたまらない。  オレの記憶力なら、全部覚えてられるから。  だから、きっと、そんな欲が出るんだと思う。  他の番たちはきっとこんなことは思わない、思ったとしても昨日何を食べたとか、何を見たとか、そんなささやかなものばかりだろう。  でも、オレは雪虫が吐いた息の数すら知りたい。 「そんな、欲望があって……」 「雪虫にも、あるよ。欲望」  はっきりと「欲望」と言われて、思わず体が跳ねる。 「あ、あ……何したい? 雪虫がしたいことなら、なんだって……」  嬉しく思ったけれど、雪虫にさせてあげられることが多くないのは事実で、オレは雪虫に近寄りながら叶えることのできないことだったらどうしようかと汗の滲む手で拳を作った。 「なんでも?」 「う……ぅん。オレが叶えられることなら! なんだって!」  そういうオレの前で、雪虫は可愛らしく笑った。  人形のように整った顔が、人間らしい表情を浮かべた瞬間の奇跡のような可愛らしさ。オレは自分の記憶力が良かったことを今ほど感謝したことはない。  後光が差していると言っても過言じゃない雪虫にうっとりと見入っていると…… 「ゆ……雪虫?」 「雪虫ね、したい の。ぎゅーって    だめ?」  優雅に広げられた手はショールを纏っているせいか羽のように見える。 「ハグ?」  問いかけを無視して、雪虫はショールを床に下ろして……服に手をかけてあっと言う間に脱ぎ捨ててしまった。  オレは止めるべきなのに、雪虫の隠されている部分が見れるんだって思ったら、その場から動けなかったし、声を上げることもできないままだ。  柔らかなシャツを脱ぎ捨てた雪虫の髪は乱れて、一気に服を脱いだから肩で息をしている。

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