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雪虫6 27

 そんなこと無理だ。  瀬能の管理下にあるここでの生活ですら、雪虫の体調は綱渡りの状態なのに……ましてや訳のわからない連中に狙われて、それを避けながらなんて、絶対に無理だ。 「…………」 「だから尚更、この研究所はデータの扱いに慎重になる」 「……はい」  オレは未遂だったと言い返すことは簡単だったけれど、それは未遂に終わるように瀬能たちが目を光らせていたからって思うと、素直に言葉が出た。 「……申し訳ありませんでした…………危険なことをしました……」 「まぁ君は、雪虫のことでこの施設の重要性をわかってるだろうから、もうしないと思うけど。気をつけてね」 「……はい」 「あと、何かあった後って、僕は対応に追われてるからしつこく電話してくるんじゃないよ」 「あ……そうだったんですね」  見捨てられたとばかり思っていただけに、やっと肩の力が抜けた気がする。 「君はまだまだ研究のネタになるからね、心配しないでいいよ」 「そ……そっちの方が心配になります……」  瀬能はオレを見てよしよしとでも言いたげに微笑んでから、電気ポットの隣に置いてあるお菓子に手を伸ばす。  話は終わりってことだ。オレがやらかしてしまったことは、しっかり反省したんだからもういいとお許しが出たんだろうけど……でも、絶対に聞かなきゃいけないことがある。 「直江さんは、どうなったんですか?」  瀬能は菓子の袋を破こうとした手を止め、少し睨みつけるようにこちらを見た。  廊下で聞いた時はごまかされて、今も話を終えてなあなあにされそうになったけれど、それでは終われない。 「そっちは大神くんが対処してるよ」 「対処って……」 「追い込むのは得意だから。彼」 「…………」  大神に、過去にクソジジィ達と一緒に追い込まれたことがある身としては動揺が隠せなかった。  ヤクザじゃないとは言いつつも、その実態はヤクザそのものだ。そんな大神から逃げるのは…… 「な、なんでそんなことをしたのか、わかったんですか? 直江さんのことだから、止むに止まれぬ事情があったとか、きっと、何かあったんです!」 「どちらにしても、大神くんのデータを持ち出した段階で、彼は裏切ったんだよ」  うっすらと浮かんだ笑みはいつも通りの胡散臭いそれだ。 「や……でも、直江さん、本当におっさんの言うことに忠実だったじゃないですか! だから、そんなはずないと思うんです。あの……ほら、よく似た違う人だったとか……」 「………………」 「そう! きっとそうです! だからもっとしっかりと調べて……から……」  言葉が途切れそうになったオレに、瀬能は手に持っていた菓子をぽんと手渡す。

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