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雪虫6 31

「どうぞ! お納めくださいっ!」 「わぁ! ありがとう!」  オレのパーカーに頬を寄せてお礼をいてくれるなら、シャツもズボンも下着だって置いていったっていいと思う。 「えぇー雪虫はいいなぁ、いつも服を貰えて」  セキはつまらなさそうに唇を尖らせると、頭に巻いたネクタイを引っ張ってクンクンと匂いを嗅ぐ。  そこにまとわりついている大神のフェロモンに対して、オレは臭いとしか感じないがセキはうっとりと嬉しそうだ。 「セキはちょっと自重しろよ。雪虫に変なこと教えんな」 「変なことって?」  きょとん として見せるあたり、タチが悪い。  雪虫の前でセキをネチネチと起こりたくないし、重箱の隅をつつくような真似はしたくない。すっとぼけられてしまうとこれ以上は言い募れなかった。 「そうだ! 瀬能先生が俺と交代だって」 「あっ……時間っ」  サッと壁にかけられた時計を見ると、瀬能との約束の時間まであと少しだ。 「ほら! ちゃんとあとは俺に任せて!」 「その自信がな……怖いんだよな……」  そうは言っても、オレがいない間の雪虫の世話はセキかうたに任せるしかない。  セキの善意に甘えている現状としては、ありがとうと素直に感謝しないと……なんだけど、やっぱり一抹の不安が残る。 「くれぐれも! アルファの嫉妬心を煽ろうなんてことすんなよ!」 「えぇ……しないよ。そんなこと」  そう言いつつも視線が逃げているから、また悪いことを考えているのかもしれなかった。  オレは後ろ髪をひかれつつも、雪虫をギュッと抱きしめてから瀬能の部屋へと早足で向かう。瀬能がセキをよこしてくれたようだけど、タイミングはバッチリだ。 「ああ、やっときた。遅刻かと思った」 「そこは……大丈夫ですよ」  実際はセキが来てくれなかったらヤバかったけれど、結果が全てだ。  瀬能はいつもの白衣じゃなくて三つ揃えのスーツを着て、カバンもいつもの使い込まれたものではなく改まった場所に行くからか高そうなものを持っている。 「すぐに着替えちゃいます!」 「うん。そうして、時間に遅れると大変だ」  いつもは相手をまたしておけばいいんだよ 何て軽口を叩く瀬能がそう言い、気にするようにネクタイの結び目を繰り返しいじる。  これから会いに行く相手はこの研究所の最大出資者だという話だけれど……瀬能がこれほど緊張するような相手なんだろうか? 「その人に、オレなんかが会っていいんです?」 「うん。いつかはちゃんと挨拶に行かなきゃいけない相手だしね。非公式の場所で、君は会わなかったかな?」 「え? オレですか? オレがそんないい育ちしたように思います?」  

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