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雪虫6 33
似たような話は以前にもしていたはずだけど、瀬能はそれに気づいていないみたいで相槌を打ってくる。
つまりそれだけ気がそぞろだってことだ。
オレは次の話題を出そうとしたけれど、きっと次がどんな話だったとしても瀬能の返事は変わらないだろうと、静かにしておくことにした。
ホテルの一室。
オレはどこか会社とかにつれて行かれるものだとばかり思っていただけに、黒くてごつい人たちがゾロゾロいるフロアを通されて、その階直通のエレベーターに乗ったあたりから妙な動悸がしてきていた。
きっと、オレなんかは一生くることがないような、とってもお高そうなホテルに、とってもお高そうな飾りに、とってもお高そうなものを着た人々。
やっぱり瀬能がオレをつれてきたのは間違いじゃないのかって不安になり出した頃、エレベーターが止まって静かに開く。
目の前がもうすでに別世界で眩しくて、きっと隣に瀬能がいなければ尻尾を股に挟んで逃げ出していたと思う。
そこにもいた黒くてごつい人が仰々しく出迎えてくれるけれど……でもしっかりボディチェックもされて、身分証も確認されて、口頭でいくつかの質問をされて、やっと進んでいいと言われた。
「あの……もっと早く聞いておくべきだったんでしょうけど、相手はどんな……」
「『世界経済の心臓』ってわかる?」
「わかりません」
瀬能的にはわかるって答えて欲しかったのだろうけど、知ったかぶりはできない。
「日本で有名な財閥は?」
「財閥? 風水……でしたっけ?」
「うん」
そう言って、瀬能は案内の後ろをしっかりした足取りで歩いていく。
オレは記憶の中の風水財閥に関係する情報を片っ端から引っ張り出しながら、その情報の量に小さく震えた。
この社会にこの財閥の関わっていない業種なんてあるのだろうかと思わせるほど、多岐にわたる会社には、医療に携わる「カザミ製薬ファーマシューティカルズ」やオレがいる研究所の技術的バックボーンとして協力してくれている「バイオ・フェロモン統合研究所」、最大大手の警備会社である「 アイギス・セキュリティ」などを含んでいて、この部分だけでもオレはめちゃくちゃお世話になっているところだ。
「え……え、ええ……そんなところのトップとなんでオレが……」
「君がやらかしちゃったからだよ」
「う……やらかしてないです」
「あ、そうだった。やりそうになっただけだよね」
棘のある言い方をされても、オレは黙っているしかない。部屋を通りすぎ、リビングのソファーの前まで来て案内のごつい人は一礼して後ろへさがる。
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