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雪虫6 37
瀬能は、オレにはあんなふうに冷たい言葉を返していたけれど、もしかしたら直江を庇うために奔走していたんだろうか?
さっきまでの会話を、オレの都合のいいように解釈するとそういうことになる。
思わず「直江さんはそんなことをするような人じゃないんです! だから、もう一度調べ直してください!」って言いそうになったけれど、それをなんとか飲み込んだ。
それは瀬能に散々言って……しかも一蹴されてしまった話だったから、ここで出しても同じことだろう。
瀬能や大神のことだ。
調べに調べて……それでもどうにもならなかったんだと、ごくりと唾を喉に押し込む。
「な……直江さんと話をさせてくださいっ!」
唐突に叫んだオレに、二人の視線が向く。
まだまだひよっこのオレが口を挟んでいい話じゃないってことはわかる、でもオレだって当事者の一人でもあるんだからその権利はあるはずだ。
「阿川くん、突然何を……」
「オレはっ……巻き込まれた、いわば被害者です! だから、直江さんと話すくらい許されてもいいと思うんです! おっさんが捕まえてるなら、会えますよね⁉︎」
一気に喋り始めたオレを瀬能が困ったように見つめて……
「会ったところで、何を話すんだい?」
「それは……どうしてオレを巻き込んだのか とか、かな」
本当はそんなこと考えてもいなかったけれど、よくよく考えればもう少しで雪虫と離れ離れにされるところだったし、理由はともかく正面から文句の一つでも言っていいだろう。
いや! いいに違いない!
直江に堂々と会う理由を見つけたオレは、ふん! と鼻息を荒くして顔を上げる。
瀬能の憐れむような表情を見てしまうと心が折れそうになってしまう。
直江は確かに大神に言われた仕事ということもあっただろうけれど、オレたちの面倒を見てくれた人だ。その間には会話もしたし、同情だとしても悩みを聞いてもらうこともあった。
じゃあこれでさようなら と切り捨てることができない程度には、直江と関わりがある。
「おっさんに、そう言ってもらえませんか?」
真っ直ぐに顔を上げたオレを見て、彼女はなぜだか突然「ぷっ」と吹き出した。
高級ホテルの高級な部屋、彼女自身も最高級のものを身につけて優雅に君臨する女主人の風格は、その小さな動作ですべてが崩れ去った。
「もぉやだ! 我慢の限界! 慧ってばおっさんなんて呼ばれてるの?」
鈴が転がるような可愛らしい笑い声はそれまでの雰囲気を壊して塗り替えるには十分だ。
そのあまりの変わりようにオレも驚いたが瀬能も驚いている。
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