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雪虫6 38
「あの……」
「ごめ ごめんなさい、いつも顔をしかめてるからおっさんなんて言われるのよ」
あはは! と声をあげて笑う。
「愛想の一つでも覚えて笑って見せればいいのに。今度、笑わせてみようかしら」
笑いを噛み殺すように抑えながら言うと、彼女はゆっくりと部屋の出口の方へと顔を向ける。
「大神に会わせるように連絡を入れておくわ。それで構いませんね」
瀬能に向けて尋ねていながらも有無を言わせない言葉は、例え雰囲気が変わったとしても彼女がこの場の支配者だとはっきりと告げていた。
車に乗り込んだ時、ぷは と瀬能が大きく息を吐き出す。
緊張が解けたとでも言いたげに脱力して運転席に沈み込むと、チラリとオレを見る。
「な、な、なんですか……オレ、やっちゃいけないことやりました?」
「…………」
「あ、あ、だって、おっさんのことはおっさんって呼んでるし、直江さんと話がしたいのはしたいし……ま、まずかったですか?」
チラリとオレを見る瀬能の表情は複雑で、オレでは紐解けない。せめて怒ってくれたら気持ちが楽なのに……
「お……おっさんがまずかったんです?」
「まぁ……笑ってくれたからよかったよ」
そう言いつつも苦そうな表情は変わらない。
「あ、は、は……ならよかったです?」
「よかったのかなぁ、彼女……大神くんと同級なんだけど」
大神と同級?
「えっっ⁉︎」
思わず飛び上がったせいか、車が大きく揺れる。
大神のことをいつもおっさんおっさんって呼んでたからついおっさんって呼んだけれど、あの人が大神と同い年ということは……?
もしかして、オレ、ものすごく失礼なことをしたんじゃ⁉︎
「よかったじゃなくて、もしかしてやらかしてません⁉︎ オレ……明日には川に浮いてたとかそんなことになったり……」
「大丈夫大丈夫。ダメだったらまずホテルから出れてないから」
「えええ⁉︎」
ふぅ とため息を吐きながらネクタイを緩めて、瀬能は緩く微笑んだ。
「それでも、君を連れてきて事態が動いたことは確かだ。よかったよ」
「それは……直江さんに会うことですか?」
瀬能は柔らかく微笑んだだけではっきりとした返事は返してくれなかった。
おっさん……じゃない、大神がオレを直江のところに連れて行くと間にきたのは次の日のことだった。
今から雪虫のところに行くぞ! と意気込んでいただけに、首根っこを掴まれたオレはジタバタと足を振り回す。
「ちょ……今からですか⁉︎ オレは今から雪虫に会いに行くところなんですけど!」
「だったらどうした」
大神の言葉は冷たくて、反論を許してくれそうな気配はない。
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