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雪虫6 40

 オレから見ても整ってるなって思える直江の顔が青アザだらけだ。  瞼も腫れているのか目も開きづらそうで……こちらに歩いてくる足取りも、どこか傾いで見える。 「な……な……」  なんで の言葉は驚きすぎて出なかった。  直江はオレに格闘とかも教えてくれていて、鍛えてもいたしこんなに傷を負うような人間には思えない。もし直江がこんなふうになるとしたら…… 「お……おっさんに殴られた?」  恐る恐るの言葉に、直江は痛そうに苦笑して親指と人差し指でマークを作った。 「少しだけね」 「っ!」 「ああ、大半は全然違う奴からもらったのだから」  大半は……とはいえ、あの大神の拳で殴られたら一発で病院送りになるのは、オレが身をもって知っている。  ……知っているだけに…………直江を見る目に憐憫を込めてしまった。  オレの真正面にいたままの直江は、その感情を読み取ったのか苦笑をさらに深いものにして、今度はオレの方に哀れみの目を向ける。 「君は……本当にお人よしだな」 「なんですか、それ」 「話は、大神さんから全部聞いているんだろう?」  直江の視線はオレをズレて、背後のドアに注がれる。閉まってはいるけれど、そこまで大神と一緒に来たのだから今もそこにいるんだと思う。 「あー……ぅー……うん、聞いたよ。聞いたけど……」 「ごめんね」  苦笑したまま、直江は謝り…… 「謝って欲しいわけじゃないよ。別に……オレは、ちょっと保管庫の前で立ち止まっただけで、何もなかったし」  何もなかったわけじゃないけれど、目の前のボロボロの直江を見てこれ以上責め立てることはできなかった。  制裁? は受けたんだろうし、痛い思いをしたのにその上でさらに攻めるのは可哀想だ。雪虫と会えなくなるとかいろいろやばかったことはやばかったんだろうけど、どこか気が抜けてしまったような直江の表情を見ると、なんとも言えない気分になってしまう。 「ははは。ほんと……お人よしだ」  そう言うと直江はテーブルの上に置いた紙の束をオレに向かって差し出した。  胸の前にぐいっと突きつけられたせいで、考えるよりも先に手が動いて受け取ってしまうと、直江はまた苦笑をこぼす。  とっさに受け取っちゃったオレが悪いんだろうけど、笑われるとやっぱりいい気はしない。 「これ、なんですか? ゴミですか?」 「あはは。拗ねないで聞いてくれる? ここには大神さんの世話の仕方が書いてあるから、きちんと覚えてね」 「おぼ……え⁉︎」  そんものいらない! と床に叩きつけそうになったのを堪えられたのは、直江が紙を束を持つ手を握り込んできたからだ。

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