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雪虫6 43

「君は、本当にお人よしなんだから」  軽い笑いと共に背中に再び投げかけられた言葉の返事を持たないまま、オレは手の中の紙束を握りしめた。  苛立ちを隠しもしない表情でオレを見下ろす大神を睨み返すと、それ以上に圧をかけたれて睨み返される。最初に出会った時から変わらない、息が詰まるような威嚇のフェロモンに血の気が引きそうになりながら、それでも……それでも…… 「直江さんを殺したりしないでください!」  オレの言葉がオブラートにく包まれていなかったからか、周りにいた黒服はピリッとした気配をオレに向けた。 「あの人は、大神さんの役に立つ人です。これだけのことを記憶し、資料もなく引き継ぎ書を書ける人なんて、よっぽどこの仕事に打ち込んでいた人間でないとできない。だから、殺したら絶対に損失だ!」 「裏切り者でも?」 「裏切りはっ」  痛いことを突かれたと顔を顰めた。  大神の中に裏切り者は絶対に許さないって前提があるのだから、直江を庇うなんてできない。  でも、でも、でも…… 「それはっおっさんが裏切らせたんだろ!」  オレの言葉に視線をさらに険しくしたが、それ以上言い返してはこない。これがチャンスなんじゃなかろうかと、オレは腹に力を入れた。 「直江さんがおっさ……じゃなかった。大神さんを裏切ったのは、あんたが裏切らざるを得ないようなことをしたからだ!」 「なんだ、それは」 「わからないなんて言わせねぇぞ! 直江さんだって、セキのことを見て心配してたんだ! オレだって……あいつが…………っあんなことされて……んの、知ってるんだからな!」  声の大きさを考える間なんてなかった。  傍で立っていた黒服たちはオレと大神のやり取りになんの興味もないみたいな顔をしているけれど、唾を飲み込む回数や拳に入れる力の加減、サングラスの向こうからうっすらと透けて見える黒目の位置を見てみれば、皆このことに興味津々なんだってわかる。 「あんたがセキを人身御供にして、ヤクザ共のおもちゃにし    ——————————————」  つまり、オレの記憶はそこで途絶えて、最後に見たのは「あっ」って声をあげそうな黒服のお兄さんと、そのサングラスに映っている大神の姿、それからこんなでっかい拳あるんだーみたいな気分にさせる鬼のようなサイズの拳だった。  左半分が痛みというよりも痺れていて感覚がない。  ただ意識が戻ったってだけならよかったんだけど、オレ、大神に引きずられてんだよね。  山道を。  これってこのまま埋められる話になるんじゃない?

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