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雪虫6 44

 知ってる知ってる。  昔、クソジジィとクソババァが金返せなくて色んなものを垂れ流しながら山で穴掘りさせられてたのを、震えながら見てたことがあるから。  この後、人がちょっと行かないようなところまで行って、自分で穴掘らされるんだ。 「ぅ……」  呻いたオレに気づいたのか、振り返った大神の視線がこちらを向いて……暗闇に爛々と光る目が鬼のようだと思った。  腫れ上がった口元をもごもごと動かしてみるけれど、痺れのせいかうまく動かず、「大神さん、どこに」と尋ねようとしたのに出てきたのは最初と最後の「お……に」の短い言葉だった。 「貴様は、まだ懲りてないらしいな」 「ひが  ちが……ひま、ひゅ」  慌てて手を振るオレを、大神は無表情のまま放り投げる。 「ぅ。わっ」  枝を薙ぎ払うバサバサとしたけたたましい音と、折れた木がそこらかしこに引っかかって痛む感触がして、最終的に木の根っこにごつんと鈍い音を立てて止まった。  左頬に加えて背中と頭も打ちつけて……このおっさんはいつになったら人を投げ飛ばさなくなるのか、瀬能に一度相談してみたくなる。  瀬能に「それが彼なりの君とのコミュニケーションの方法なんだよ」なんて茶を飲みながら言われたら、オレは整えた資料をすべてひっくり返してしまうかもしれないけど。 「————やだびっくりー! どうしたの⁉︎」  薮に放り込まれたオレの耳に入ってきたのはキン と鼓膜を突くような甲高い女の声だ。  女?  こんな……人気のない山の中、周りは明かりもないのに?  大神は足元を照らす小さなライトを持っていたが、今はそれが見えない。だからオレがいるここは真っ暗な闇で、自然の昏さのど真ん中だった。  これで女の声がか細かったら「幽霊⁉︎」とか思って取り乱していたかもしれない。先に埋められた人のお化けが仲間を欲して……なんて馬鹿げたことを思ったりもしたのだろうが、聞こえてきた声はあまりにも明るい。  幽霊とは正反対の位置にいるような生き生きとした生命力に溢れているのだから、きっと生きている人間だ! 「連絡くれればよかったのに」 「電源を切ってただろう」 「あ、そうだった」  二人は気安そうに会話を繰り返す。  盗み聞いた声の力強さだけでも、自分に自信があって美人なんだろうな と想像ができてしまうくらい溌剌とした声。  オレはなんとかジタバタと暴れて体を起こすと、闇の中に聳え立つ大神と……見事な蜂のような腰を持った金髪美女が目に入る。  大神はスーツだし、女性の方はセクシーなドレスワンピースだ。  背景が山よりも都会が似合う姿で暗闇に立つ様子は、なんだかこれから地獄に突き落とされるような予感を感じさせる。  

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