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雪虫6 45
「あら⁉︎ この子……」
びっくりした美女が駆け寄って……オレの頭からつま先まで舐めるように見回す。
気まずくて……気まずくて……耐えきれなくなって、手を突き出して「ちょっと離れてくらひゃい」とお願いをした。
「あはは! Hello Hello Hello!」
目の前をひらりと赤い爪が蝶々のように泳ぐ。
「あ……ぅ、こんばんは……」
「大神! どうしてしずるを連れてきたの?」
挨拶だけしたら、美女はもうオレに興味がなさそうだった……ってか、どうしてオレの名前が知られているのか、まずはそこが引っかかった。
張り出したバストと臀部、そして信じられないくらい細いウエスト。煌びやかな体の曲線を強調する服を見事に着こなした妖艶な美女は、その体だけでなく顔だって一目見たら忘れられるようなものじゃない。
ましてや、オレなら忘れない。
けれど、オレはこの人に会ったことがなかった。
「こいつが直江の後釜だ」
「えっ」
真っ赤な口紅が塗られた唇が大きく開き……まつ毛に彩られた瞳が痛みを訴えるように曇る。
「それで?」
「こいつの教育を。この腫れが引くまでに」
「私、リフレッシュ休暇中なんだけど?」
つん と言い返して、彼女はピンヒールを履いた靴で地面を蹴った。
頭の先からつま先まで、本当に山にいる意識がないんじゃないかと思う格好だ。
「すごくいっぱい食べてぇ、とっても体が重くってぇ、ほら、大神。この辺とかちょっと肉がついたでしょう?」
美女は大神の手を躊躇もなく掴むと、コルセットで締め上げたかのような腰にゆっくりと這わせていく。
その親密さに……オレは、二人の過去を垣間見た気がした。
これ……セキに言えないやつだろ。
「別に変わってない」
「んもう! そうやって無関心だから直江だってあんなことになるのよ? わかる? この世で一番相手を傷つけるのは暴力でも暴言でもなく、無視なんだからね! ホント、無視されたら寂しくて……私泣いちゃう……」
よよ……と崩れそうになった美女を大神は支え、毛ほどの興味もないように「そうか」とだけ返す。
「ちょっと! ここ最近、仕事が立て込んでで黙に会いに行けなかったことが原因なんだけど! これには大神も一枚噛んでいるんだから保証という意味で黙を説得するべきだと思うの! もしくは私と黙に休暇を与えて温泉とか行ってこいって言ってくれたらそれでもいいのよ⁉︎ あなた社長なんだからそれくらいしても 」
「すがる」
大神の一言で、彼女は……多分、すがる? は口を閉ざす。
「お前の仕事はこいつに秘書業務の基礎を叩き込むことだ。できなければお前を連れ歩くからな」
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