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雪虫6 64
こめかみの小刻みな動きを心の中でせせら笑いながら、「セキからも他のアルファの臭いがした」と告げる。
「これでも、あそこに他のアルファが入ってこないって?」
嘘を吐くなと逆上するなりなんなりしてくれればいいと思った。
そすれば、直接確認しに行けばいいと唆すだけで……オレの鼻なら嗅ぎ分けできると言えば、一緒に連れて行ってくれるかもしれない。
「……は」
そんなオレの浅はかな考えは筒抜けだとでも言うように大神は鼻で笑うと、咥えたままだった煙草をむしるように取って握りつぶした。
「セキにはアルファとマッチングをさせている。他のアルファの臭いがついていたとしてもおかしい話じゃあない」
青筋を立てつつも仮面を外さない大神に焦れて、オレはさっき大神がしたように「は」と鼻で笑ってやる。
「あんたの鼻じゃわかんないだろうけど、アルファの臭いはマーキングなんかじゃなかった」
「……」
オレはいつの間にか食いしばっていた歯の間から絞り出すように声を出した。
「マッチングで、腹の中に臭いをつけるってどういう了見なんだろうな? それともオレが知らないだけで、マッチングってのは体の相性を見るための っ」
がつんと顎に衝撃が来て、まず目が回った。それでなくてもふらつく体が傾いだ途端、今度はがくんと浮遊感がくる。
首が締まって……大神がオレの襟を掴んでぶら下げてるんだと理解した頃には、壁に向けて投げつけられていた。
水谷に散々教えられた受け身をって思うけれど、まず体がうまく動かない状態でそんなことをできるはずもない。
したたかに体中をぶつけて、変な悲鳴を上げるぐらいしかできなかったオレは、すがるが割り込んでくれなかったら再び殴られるか蹴られるか、もしくは殺られていたと思う。
「だから! 暴力はダメだって!」
「そいつは自殺願望があるらしいからな」
「もう! そっちは私が調べるから! この話はこれでおしまいにして!」
睨みつけられて……オレはうまく動かない体を顧みて、すがるの言葉に素直に従うことにした。
「雪虫のことも一緒に調べておくから、貴方はいい子してなさい! どうして大神にだけそんな口のききかたをするの」
ぼやくように言われても、オレだってわからないんだから説明のしようがない。
社会的に、大神に敬語を使わなきゃいけないことがあるってのはわかる……が、それはそれ、これはこれだ。
たぶん、ぶっちゃけてしまえば馬が合わないとかもうそんなレベルなんだろうから、オレと大神の間に横たわるプライド問題については、放っておいて欲しい。
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