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雪虫6 66
「ボクちゃんなんて言われるほど、若くないです」
むっとして言ってやると、藪秋はちらちらと横目で見てから鼻で小さく笑う。
「えぇ……でも実際、わっかいよな? 若いですよね? 社長!」
「クソガキだ」
「だってよ」
「クソでもガキでもないです。おっさんが勝手に言ってるだけです」
つんとした態度で返すと、藪秋がクマのある目元をふっと緩めて面白そうに微笑んだ。まるでそういうところが子供なのだと言いたげだった。
畑仕事や料理ならば仕事内容が想像できたけれど、元々の生活になんの関りもない秘書業務なんて何をするのかまったく分からない。
直江からほぼ口頭に近い形で説明を受けてはいたが、多岐に渡る仕事内容は付け焼刃でどうにかなるものなんかじゃなくて……
すがると藪秋がサポートに入ってくれたけれど、オレの一日は食事もとれないくらい追い立てられる忙しさだった。
これを直江はたった一人でこなしていたと言うのだから……
「いや、ブラックだ。絶対ブラックだ。真っ黒くろの黒すぎ案件!」
そう叫びながら、オレは会議に出ている大神を待ちながら藪秋が持ってきた資料をめくっていく。
「だろ? まぁでも社長が一番働いてるんだからなんも言えねぇよなぁ……」
そう言いつつも、藪秋の目の下のクマは日々濃さを増している。
「まぁ飯はしっかり食って、倒れんようにしろよ。アルファつっても人間だからな」
よろよろと藪秋は椅子に座り込むと、間に合わせとわかる内容のコンビニ飯を机の上に広げて好きなの食べろと手を振った。
とりあえず一番こちらに転がってきたおにぎりに手を伸ばしかけて……ひっこめて書類をめくる。
「食えって言っただろ。ダイエットなんざ、腹が出てから考えろ」
「そんなこと考えてないですよっ」
……ただ、オレだけがこうやって食事をしていいのか、わからなかった。
あの日、怖がらせてしまった日を最後に雪虫には会えていなくて、うたからは少し食欲がないようだと連絡を受けていた。それは、オレが身勝手に雪虫を責め立てて驚かせてしまったためだし、自分の考えを優先した結果我慢ができなかったせいだ。
やっと、少し肉がついてきたとホッとしていたのに。
オレが一番に考えてあげなきゃいけないのに、オレが雪虫の体調を崩させる原因になってしまうなんて……
「番がちゃんと食べれてないのに、オレだけ食べるのもって思っただけです」
「……お前、過保護なのな」
「は?」
思わず険のある声が出た。
「藪秋さんは雪虫の体のことを知らないからそんなことを言うんでしょうけど。本当にちょっとしたことで熱を出すし、寝込むんです!」
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