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雪虫6 67
手の中の資料がぐしゃりと潰れるのも構わずに力説するオレを見る藪秋の目は冷ややかだ。
「こんな仕事放り出して、すぐに面倒見てやりたいんです!」
「いやいや、その雪虫って子は両手足そろってるんだろ?」
「 は?」
「両手足そろってて、自分で考えることもできるんだろ?」
藪秋はオレに尋ねかけながらもおにぎりのフィルムをはがす手を止めない。
その様子は、まるで休憩中にする他愛ない同僚間での会話のようだった。
オレは、雪虫の体のことも知らず、まるで健康で普通の生活をなんなく送れるんだろう? とでも言いたげな様子に、苛立ちを覚えて資料を机に叩きつけた。
「オレがいなかったら! 雪虫は生きていけないんですよ! それくらい体が弱くって……」
「だからってよぉ。その子だって自分の考えってもんがあるだろ?」
海苔のついた指先がぴっとオレを指さす。
それはまるで心臓を狙うかのような、するどいものだった。
「その子は、しずるにそこまで面倒を見てもらうことに対してなんて?」
「え?」
「ずっとその子の代わりに、服に食事に掃除に……一杯やってきたんだろ? で、そのことに対して、えぇーっと……雪……? 雪ちゃん? はどう思ってるんだ?」
尋ねられても、オレは答えを持っていなかった。
オレが雪虫の生活全般を背負うことに対して……雪虫は何か言っただろうか?
大神が保護していた時も、オレと出会ってからも、雪虫の世界は驚くほど狭いから、もしかしたらオレに世話を焼かれる生活が普通だと思っている可能性は高い。
うたもセキも世話焼き要員なんだから、雪虫の周りはそれで固められていると思ってもいい。
「だって、そんな檻の中みたいな生活、息苦しいだろ、普通なら」
え? と思ったオレの指から書類が滑り落ちた。
さっと散らかるそれを目で追いつつも拾うための一歩が踏み出せないのは、雪虫の生活を息苦しいと言われたことが胸に突き刺さったからだ。
雪虫の生活を制限したことはないつもりだ。
狙われていたり、体が弱いという理由があってそうしなければならない場合はあったが、オレは可能な限り雪虫の希望に応えることができるように頑張った……はずだ。
「…………」
オレは、先日大神と衝突した際にも似たようなことを言われたと。思い出していた。
度の超えた献身。
雪虫のことは、できることが限られているから先回りしてオレができることはすべてやっておこうと思っていたけれど、藪秋はまるで……いや、はっきりと雪虫にかまいすぎているからよくない とでも言いたげだ。
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