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雪虫6 73
「お前の人生は、お前自身の選択の結果であるべきだろう?」
冷ややかに見降ろして、それっぽく言ってくるけれど、オレの人生の選択機会をことごとく奪っていってるのはあんただろうって言い返したかった。
そんなこと言ったらどうなるかわからないから口にチャックをするしかないけれど。
とはいえ、雪虫を番にしたのも、雪虫のために瀬能の助手になったのも、大神を手伝っているのも、全部が全部オレ自身の選択だ。
ありえない話だけれど、オレには雪虫を選ばなかった という未来もあったってことで。
「……」
いや、違うな。
雪虫がオレのことを選んでくれたのが始まりなんだから、オレが選択したものはなんだったんだろうか?
選ばれたから選んだ?
運命だから選んだ?
「オレは 」
必要として欲しかった という言葉が喉元まで出かけて慌てて飲み込む。
以前に大神たちに言われたセリフが脳みその中をぐるぐるとめぐり始めて、いたたまれなくなって拳を強く握り込んだ。
ジジィは浮気しまくりで、ババァは金が大事で。はっきりと自分の境遇がわかる頃にはオレの家はバラバラで環境は最悪で、両親は子供に構うような奴らじゃなかった。
それでも、バイトの給料日だとかして欲しいことがある時には声をかけてくれて、なんとなく……なんとなくだけど親子っぽいこともあった。
幼い頃の記憶そのままってわけにはいかなかったけれど、家族の暮らしがあって……
オレが金を作って持って帰ってくれば、オレが親のいうことを聞いていれば、オレはオレの存在を認められてそこにいてもよかった。
「……オレはちゃんと、自分で選び取ってる」
つんと言い返したオレに大神は返事を返さなかった。
製薬会社、広告代理店、医療物流会社、保険会社にそれから……?
大神が次々と挨拶を交わしていく相手の所属と名前、近況を耳打ちしながらこのやり取りが何に繋がるんだろうと溜め息を吐く。
今回のパーティーのお供は、自分よりもオレの方が適任だと藪秋が言い張った理由もこの大勢とのやりとりにあるんだろう。
慈善団体のチャリティーガラという名目での開催だと聞いていたが、話を聞いていると慈善なんてものとは関係のない話ばかりが聞こえてくる。
「おや? 大神社長の趣味が変わられたのかな?」
声をかけてきたのはー……東都バイオダイアグノスティクスの代表取締役社長の篠崎だ。
オレが耳打ちするよりも先に大神が「そう見えますか?」と皮肉を込めたような口調で返す。少なくとも表面上はにこやかなやり取りが多い会話の中で、はっきりとわかる大神の嘲りの調子に思わずオレの方が慌ててしまう。
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